なぜ『フォーブス ジャパン』を創刊するのか 元外資金融マンの編集長の挑戦

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変革期にこそ必要な「展開力」

――そのときに、これまでの金融の経験が生きる。

日本のメディア業界を見ていて思うのは、本質的にビジネスや収益性に対する感覚が弱いと思います。僕から見ると当たり前のことでも驚かれる。

たとえば、今回、800人を招いて創刊パーティを行います。安倍首相のメッセージがあり、大臣から、よく知られている1部上場企業の会長・社長、20代の若手ベンチャー企業の社長まで幅広く来ていただく予定です。こういう発想がメディア業界にはないのでは――と思うのです。「カネがかかるからやめよう」という人が多い。

ただ、私からすると、これこそが「メディア」なんです。アンバサダーになる人たちが来て、出版業界の人が来て、スポンサーの人が来る。会場自体がメディアになるわけです。ここが勝負所なんですね。メディアというのは、マーケティングとして利用する場合、時に諸刃の剣になりますが、うまく使うといいツールになる。

「なんで斜陽産業の雑誌の編集長になるのか」というのも同様です。これまでの発想であれば、斜陽産業のままかもしれませんが、メディアを大きな可能性としてとらえれば話は違います。私からすると雑誌はスタートラインというわけです。この後、さまざまな展開がある。雑誌以降の、こうした「展開力」の発想がこれから必要になるわけです。

――これから先を考えていると。

資金がないとビジネスができないと思われがちですが、私は資金量がビジネスの成功を左右するものではないと思っています。むしろ、おカネよりビジネスモデルが大事です。ビジネスモデルがよければ、国内だけでなく、アメリカやアジアからでも資金調達できる。

また、こうした話をすると、「おカネがない」という閉塞感から、一気に“ワクワク感”に変わるじゃないですか。

さらに、私の個人的な能力として、金融の知識やビジネスモデルのノウハウだけではなく、グローバルな会社の日本のヘッドを長く務めてきて、本社と対等なコミュニケーションができ、本社からの信頼を得ることになれていることがあります。海外メディアの日本版もありますが、本社と対等に話ができるところは少ない。その点、私たちはライセンスを受けてフォーブスジャパンを運営しますが、本社と密にコミュニケーションをし、彼らが望むような内容でかつ高いクオリティのものを出すことで、クレディビリティ(信頼性)を得ることができるのではないかと思います。信頼されると、本社の膨大なリソースもわれわれのリソースとして使える。これは私の感じていることではありますが、これまでグローバルな視点をもち、かつ世界各国のグローバルなリソースを使えるメディアは少なかったのではないかーーと思うのです。

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