ワクチン接種で発症「アナフィラキシー」の正体 「接種後の待機」について具体的に議論すべきだ

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アナフィラキシーでは一般に、80~90%に発疹などの皮膚・粘膜症状が現れる。息が苦しくなるなどの呼吸器症状は~70%、吐き気や嘔吐、腹痛などの消化器症状が~45%、血圧低下などの循環器症状が~45%、意識喪失などの中枢神経系症状が~15%に見られる(日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン」より)。

アナフィラキシーは、もちろん発生しないに越したことはないが、万が一の場合も適切な緊急処置(アドレナリン投与)を行えば最悪の事態は免れる。通常は目立った後遺症もないのがせめてもの救いだ。

なお、集団接種会場では、接種後の15~30分間、体調の様子を見るための待機所を設けることが想定されているようだ。実施側には、それだけ広い会場の確保が求められる。自治体によっては、医療機関等での実施が中心となるところもある。その場合も、基本は指定の場所で、場合によっては医療機関付近で各自、待機しておくのがいいだろう。自家用車で待機することとする自治体もあると聞く。

また、人員の確保と配置も課題だ。厚労省の資料「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」によると、「接種後の状態観察を担当する者を1名」配置することとなっている。そのスタッフは「可能であれば看護師等の医療従事者が望ましい」とされているが、いずれにしても1人では、実際にアナフィラキシーやその他有害事象が発生した場合に人手が足りず、会場全体の動きがストップしかねない。

アナフィラキシーそのものは迅速に適切に対処すれば大事に至らないため、接種実施側が接種後の待機のあり方について具体的に議論し、シミュレーションしておくことが大切だ。

原因は、mRNAワクチンに不可欠な医薬品添加物?

さて今回、インフルエンザなど従来のワクチンに比べて高頻度にアナフィラキシーが発生しているのは、「ポリエチレングリコール」(PEG)という物質が含まれるからだ、という説が『Science』誌等で指摘されている

PEGは、「医薬品添加物」として、さらにはヘアケア・スキンケア製品、洗剤、顔料分散剤、潤滑剤などの用途で、人体に使用するさまざまな製品に含まれている。特に液体状のPEGは、人体への毒性が低い一方で、優れた潤滑性(滑らかさ)や溶解性(溶けやすさ)を示し、異なる物質同士を均質に混ぜ合わせるのに有用だ。

そのため、保湿剤や、液体塗り薬の安定剤、脂溶性の薬を溶けやすくする等の目的で添加される。薬に混ぜておけば、患部に薬が浸透しやすくなり、有効成分をきっちり届けることができる。

『Science』の記事によれば、新型コロナで初めて実用化された「mRNAワクチン」では、体に免疫反応を起こさせる主役のmRNAが、脂質ナノ粒子のカプセルに入っている。このカプセルの分子をくるむことで、変質を防いで長持ちさせるのがPEGだ。

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