キヤノン、上方修正後に待つ「新規事業」の難題 医療機器、ネットワークカメラは増収増益に

拡大
縮小

インクジェットプリンターも在宅勤務や在宅学習の機会が増え、追い風が吹いている。家庭での印刷需要が高まったためで、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、国内外でインクジェットプリンターが供給不足に陥ることもあった。神奈川県内のある家電量販店店長は「店に店頭見本以外在庫がないときもあった」と振り返る。

インクジェットプリンター最大手のセイコーエプソンは新型コロナによりインドネシアなどの生産拠点で2020年3月と9月に休業を余儀なくされた。それに対し、キヤノンは順調に生産し、シェアを拡大。2020年12月期のインクジェットプリンターの売上高は3198億円(2019年12月期は2881億円)と1割増となった。

課題は主力のオフィス事業

もっとも、予想以上に好調だったインクジェットプリンターとカメラは、キヤノン全社の売上高の2割にすぎない(2020年12月期実績)。売り上げの半分近くは複合機やレーザープリンターなどのオフィス事業で、同事業を取り巻く環境は厳しい。

オフィス事業はペーパーレス化による市場縮小が始まっていたところに、コロナ禍による在宅勤務の拡大が直撃。出社率の低下で複合機の稼働率や販売台数が低下している。2020年12月期のオフィス事業の売上高は前期比17.8%減の1兆4402億円、営業利益は同50.7%減の814億円と大きく落ち込んだ。

キヤノンもオフィス事業の苦戦に手をこまぬいているわけではない。ビジネスモデルを、プリント量に応じて課金するものから、文章データ管理やセキュリティ保護などのITサービスを提供するものへ転換。在宅勤務が拡大すれば、ITサービスの需要も見込める。

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