黒船前夜 渡辺京二著

黒船前夜 渡辺京二著

千島列島、サハリン、蝦夷(えぞ)という未開の地を舞台にした、ロシアとアイヌ、幕末日本、三者三様の思惑と行動を丹念にたどった力作である。ロシアは日露通商の道を探り、アイヌは恬淡(てんたん)と自活の道を求め、松前藩と幕府は穏便な鎖国策で済ませようとする。満足な地図もなく厳しい自然条件のもとでの手探りの航海と怪しげな通訳によって、異文化理解が深まっていく過程が伸びやかな史観によって浮かび上がる。

ロシアの船長たちもなかなかに個性的だが、日本人も捨てたものではない。中でも蝦夷政策で老中へ大胆な提言をした河尻春之、荒尾成章など幕僚たちの志と気骨、潔くロシア船に捕らわれた豪商・高田屋嘉兵衛の豪胆ぶりな魅力など、幕末には現代より人物がいたと知る。レザーノフの駆け引きやゴローブニンの幽囚を書いた終章も日露前史として興趣が尽きない。外交のあるべき姿を考え、北方領土の歴史を知るうえでも役に立つ。(純)

洋泉社 3045円

  

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