SBI証券の胸突き八丁、最大の武器が今や弱点に

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 株のほか株価指数先物などのデリバティブ(金融派生商品)は、値動きが激しく売買も活発になされるなど、ネットとの親和性が高い。だが、投信のような基本的に中長期で運用する金融商品は、手数料を多少下げたところで、投資家がネットに殺到する事態には至っていない。

他のネット証券大手でも同じ傾向が見られる。中高年世代を中心とした富裕層は、もともと旧来型の証券会社と取引があるうえ、人を介さずネットだけで完結する取引に抵抗も少なくないようだ。「富裕層顧客を開拓するためには、人間関係の構築が不可欠」と、競合する楽天証券の楠雄治社長も分析する。

SBIグループも手をこまぬいているわけではない。SBI証券は今、“ネット専業”の旗を完全に降ろしつつある。昨秋から冬にかけて、「SBI証券」の看板を掲げた店が主要都市に続々と誕生した。昨年10月まで全国23カ所だった店舗数は、今年6月をメドに約150カ所まで急増する。単純な数で見れば大手証券と遜色ない規模になる。

そのカラクリは、金融商品仲介業者を活用する点にある。事業会社やファイナンシャルプランナー(FP)などに、口座開設や金融商品の売買勧誘などを委託する仕組みで、いわばFCチェーンのようなものだ。

SBI証券は昨夏、会計事務所や税理士事務所など、金融商品仲介業者との提携網を構築していた日本インベスターズ証券から、同事業を買収している。企業経営者や資産家などの顧客基盤を持つ会計士や税理士などを経由して、投信をはじめとする金融商品の拡販をもくろむ。

昨秋以降、仲介業者との関係構築や後方支援などの専任担当者も二十数人配置した。「対面取引を好む顧客層に
売り込んでいく」と、リテール営業統括部管掌の高村正人取締役は意気込む。井土太良社長も「大手証券に挑戦状をたたきつけるなら、対面営業は避けて通れない」と言う。一部の店は「SBIマネープラザ」の看板も同時に掲げ、証券分野だけでなく保険や住宅ローンなどの幅広い金融商品を取り扱う。

他力本願の「仲介」活用 高齢者に低い認知度

だが、このビジネスに立ちはだかる壁もまた高い。04年に解禁された金融商品仲介(当時は証券仲介)だが、過去に成功例は存在しない。仲介ビジネスに積極的なある大手証券の幹部も「ネットワークは構築したが、正直言って目立った収益を稼ぐまでにはなっていない」と漏らす。

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