国内MBAの光と影--不況で志願者が増えるが、質低下の懸念も

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 国内MBAの草分けである慶應ビジネス・スクール。2年間の全日制で、主に会社を辞めた社会人や企業派遣組が学位取得に専念する。河野宏和校長は「夜間週末型では仕事のために出席日数が不足してもMBAを取得できる。これでは経営の勉強はできない。専門職大学院制度の大きな落ち度」と問題視する。

教員のレベルが満たされていないとの指摘も多い。専門職大学院では、研究者教員以外に社会経験のある実務家教員の配置が求められるが、「実務経験のある専任教員の確保は難しい」(都内の専門職大学院)のが現状。

早稲田の遠藤教授は「MBAの称号は一つでも内容はピンキリ。参入の縛りが緩く、おカネを出せば買えるようなお手軽MBAが増えている」と疑問を投げかける。

この現状に危機感を抱いた神戸と慶應、京都の3校は1月、MBAでの包括的な連携で合意した。神戸大学大学院経営学研究科の加登豊教授は、「人材育成でMBAが果たす役割は大きい。連携して社会的認知を高めたい」と狙いを語る。質向上に向け、3校で教員の相互派遣や教材の共同開発などを検討する方針だ。

一方で、「日本企業にMBAの価値が認識されておらず、米国と比べてニーズが少ない」(明治大学大学院グローバルビジネス研究科の上原征彦教授)といった問題もある。

かつて欧米トップスクールのMBA取得が盛り上がったときは、修了生が派遣元の企業を辞めて転職するケースが相次ぎ、ブームが沈静化した経緯がある。MBAの取得者数が増加傾向の中、企業への価値訴求も必要だろう。

量と質の狭間で揺れる国内MBA。不景気で再び高まる熱を前に、浮かれてばかりもいられない。
(許斐健太 撮影:大澤誠 =週刊東洋経済2010年4月10日号)

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