伊藤忠の社長交代で透ける「岡藤会長」の存在感 成長のカギを握るファミマ経営陣もテコ入れへ

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とくに生活消費分野の核となるファミリーマート関連事業を一手に担う。この第8カンパニーのトップには、岡藤氏の「懐刀」と言われる細見研介執行役員が就いていた。

大手コンビニ、ファミリーマートの経営課題は山積している(編集部撮影)

ファミマは伊藤忠の今後の成長エンジンと期待されるが、多くの課題を抱えている。例えば海外展開が遅々として進んでいない。中国では現地のパートナー企業が継続的な利益相反取引などを行っていたとして訴訟を継続しており、出口はまだ見えていない。国内でも、弁当などの商品開発力はコンビニ王者のセブン-イレブンに比べると見劣りする。

伊藤忠はファミマへのテコ入れを行うために、2020年7月から8月にかけて約5800億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施。50.1%だった株式保有比率を最終的には9割超とする。伊藤忠が主導してファミマの経営課題の解決に当たる算段だ。

注視すべきは細見氏の行方?

そして今回、新たに社長を送り込むことも決めた。第8カンパニーのトップである細見氏が3月1日付でファミマの新社長に就任する。細見氏はファミマの立て直しだけではなく、ファミマの強みを伊藤忠の成長に結びつけることが期待される。そのためには、全国で1日約1500万人もが来店するファミマの顧客購買データの活用が焦点のひとつになる。

そういった意味で注目されるのが、伊藤忠がファミマ、NTTドコモ、サイバーエージェントと組んで2020年10月に設立した「データ・ワン」という新会社だ。ファミマの購買データと、約4700万人が登録するドコモのdポイントカードの会員データ、そして顧客の位置情報を組み合わせてターゲッティング広告などを展開する。例えば、購買データを分析し、ユーザーに合わせてサプリメントの広告を配信するといったことが考えられる。

岡藤氏の描くマーケットインを重視する次世代の伊藤忠にとって、ファミマの事業強化・活用はグループのさらなる成長へのカギを握りそうだ。その点、ファミマのテコ入れや新たなビジネスの具体化といった重責を担う細見氏の今回の人事は、伊藤忠本体の社長交代よりも重要な意味を持つのかもしれない。

社内からは早くも、「細見氏はいずれ伊藤忠の社長になるだろう」(伊藤忠社員)との声が聞こえてくる。次の社長人事を占う意味でも、ファミマの動向に注視する必要がある。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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