バイデン1/20就任演説で外せない7大ポイント 危機的なアメリカをどう一致団結させるのか

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⑤世界観

トランプ大統領は、就任演説で「母親と子どもたちは貧困にあえぎ、国中に、さびついた工場が墓石のように散らばっている。教育は金がかかり、若く輝かしい生徒たちは知識を得られていない。そして犯罪やギャング、薬物があまりに多くの命を奪い、可能性を奪っている。このアメリカの殺戮は、今、ここで、終わります」と述べました。「アメリカの殺戮」という過激な表現を使い、超絶暗い過去から明るい未来へという世界観を提示したわけです。

一方で、バイデン新大統領就任演説で示されると予想される世界観は、必ずできるという可能性のある世界です。バイデン次期大統領は、大統領選挙勝利演説で「私は、アメリカは一語で定義することができる、と常に信じている。それは“可能性”である。アメリカでは、誰もが、自分の夢と神から与えられた能力がある限り、行き着けるところまで行く機会が与えられなければならない」と述べています。

重要なのは団結を訴え、共感を得ること

また、リンカーン、ルーズベルト、ケネディ、オバマという4名の元大統領を挙げ、それぞれがそれぞれの変曲点で「絶望に打ち勝ち、繁栄と目的のある国を作る機会」をつかんできた、「私は、私たちが成し遂げられることを知っている」「私たちが団結したときには、成し遂げることができなかったものは何一つない」と訴えています。バイデン新大統領にとって、分断という歴史的な危機に対して必ず団結できるという可能性、その世界観を国民に示し共感を得ることは、就任演説で極めて重要になってくるものと予想されます。

⑥価値観

多様性が重視されるアメリカでは、これまで同国がどのような価値観を大切にしてきたのか、これから新政権はどのような価値観を大切にしていくのかといったことを国内外に示すことが非常に重要です。

トランプ大統領就任演説では、本音、正直、変化という価値観が提示されました。それに対して、バイデン新大統領就任演説では、正義、礼節、公平という価値観が打ち出されると考えられます。これらは明らかにトランプ大統領が欠いていたものです。バイデン次期大統領の指名受諾演説でも勝利演説でも、これら価値観が全体にちりばめられています。

特に「正義(Justice)」は、先に述べたパンデミック(新型コロナウイルス)、経済危機、人種差別、気候変動という「4つの歴史的危機」およびそれらを解決していくための政策を語る際にも多用されている言葉になっています。これは、バイデン次期大統領は、その就任演説においても、正義感、倫理観、または宗教観に近いような強い意志を持って4つの危機に対峙する、そして4つの重点政策を遂行していくという姿勢を明快に示してくることが予想されます。

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