アメリカ分裂でバイデン政権の舵取りは困難に 当初から共和党と民主党左派の挟み撃ちに遭う

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1月20日正午にバイデン政権が発足することは、トランプ氏も認め、確実となった。ようやくホワイトハウスの住人となるバイデン氏だが、トランプ政権から引き継ぐ国内外の危機は過去の大統領が経験したことがないほど深刻だ。1世紀ぶりのパンデミック、経済危機、人種問題をめぐる社会不安、そして気候変動問題など、政権が直面する課題は山積みだ。だが、発足当初から政権運営の最大の悩みの種となるのは、南北戦争(1861~1865年)以来とも指摘される社会の二極化であろう。議事堂乱入事件でそれが浮き彫りになった。

4年前までバイデン氏の上司であったオバマ前大統領も社会の二極化を危惧していた。オバマ氏が一夜で政界のスターに飛躍した2004年民主党全国大会の演説は、すでに国の団結を呼びかけたものであった。しかし、オバマ政権下でも二極化は進み、トランプ政権でさらに悪化した。

バイデン氏の中道政策に反発、党内の亀裂も鮮明

大統領就任式はその2週間前にトランプ支持者がよじ登って占拠した連邦議会議事堂西側で開催される予定だが、バイデン氏はその場で国家の団結を改めて訴えるに違いない。

29歳の若さで上院に初当選し、半世紀近く首都ワシントンで過ごしたバイデン氏は「ワシントンの生き物」とも称される。上院幹部そして副大統領を経験し、ここまで政治経験が豊富な大統領は、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺後に引き継いだリンドン・ジョンソン大統領(1963~1969年)以来とも指摘される。バイデン氏はアメリカの分裂を修復することに楽観的な見方も示しているが、その長いワシントン経験によって実現できるのであろうか。

不正選挙でバイデン氏が大統領に就任したと信じるトランプ支持者は多数いるが、ほかにも懸念はある。自身を含む穏健派と急進左派やリベラル派との間で見られる民主党内の対立だ。バイデン氏は2020年12月末、メディアに対しアメリカ政治は中道にシフトしたと語り、中道の政策を推進する意志を明らかにした。

「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」を掲げ当選しワシントン政治の伝統を破壊してきたトランプ大統領に対し、バイデン氏は「アメリカを再び正常に(Make America Normal Again)」とする政策だと、政治専門家は揶揄している。確かに有権者が政治の正常化を望んでいる面もあるだろう。

だが、民主党内で最も勢いを増している左派は、中道の政策を望んでバイデン氏を支持したわけではない。民主党を統一させる効果を発揮したのはバイデン氏の掲げる政策ではなく、トランプ氏の存在と同大統領の危機対応についての懸念であった。

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