【産業天気図・パルプ・紙】原燃料の低位安定は追い風だが、需要低迷はもはや構造的

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10年4月~9月 10年10月~11年3月

パルプ・紙業界は2011年3月まで終始「曇り」が続く。国内の需要減に安価な中国品の輸入拡大が続く“構造不況”が色濃くなる中、業界各社間では体力差が鮮明になりそうだ。

紙・板紙の需要は07年に減少に転じ、09年で3年連続で前年割れ。一方では中国品を中心とした輸入紙が円高をテコになだれ込み、輸入紙比率は6.6%と比較できる1962年以降で過去最高。内需から輸入分を差し引いた国内メーカーの出荷量は実に21年ぶりの低水準という惨状だ。

ただ、そうした中にあって10年3月期の業界各社の業績は極めて好調だ。これを前回本欄では、空は晴れているのに雨が降るのたとえで「狐の嫁入り」と評した。古紙価格を中心とした原料や原油・石炭などの原燃料価格の低下に救われたのである。いや、「神風」と呼んでもいい。これから5月に向けて発表されるであろう決算は過去最高を更新するところも出るなど大手を中心に相当に上ブレするだろう。

この勢いは11年3月期も続くのか。日本製紙連合会の需要予測によると2010年も国内需要はわずか1%程度だが微減が続き、2年連続で3000万t割れとなる見通しという。荷動きの量に比例するといわれる板紙(段ボール)は持ち直し傾向が続く一方、新聞やチラシ、書籍など洋紙の回復は構造的に厳しいというのが業界内での共通の見方だ。

損益的には「古紙価格の反騰懸念」が数カ月前まで業界関係者のマインドを支配していたが、ここにきてそれもにわかに和らいている。大手各社は10年3月期までに在庫調整、余剰設備の停止、拠点の再配置、人員合理化などで需給見合いの供給体制にほぼメドがついた。ただ、中には設備は止めたものの体力が伴わず減損を先送りした企業があるのも事実。この1年でその差はより鮮明になる。
(山本 隆行)

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