気持ち・読んでる。西友の「KY」絶好調!《それゆけ!カナモリさん》

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 あくまで「気持ちを読んでいる」のだろう。

 アパレルでカジュアル以上に目立つのが、昨年後半からさらに注力している「スーツ」だ。従来、7900円で展開していた紳士ビジネススーツを、昨年10月8日からGeorgeブランドに組み込み、業界最安値の5000円でセットアップスーツとして発売した。ここでもウォルマートの購買力を活かして中国で集中生産したり、カラーをブラックのみに集約したりして実現した価格だ。さらに、今年2月から同じくGeorgeブランドで3800円の女性用就活スーツを発売。 “氷河期再来”といわれる就職戦線に挑む学生を低価格スーツで応援するという。

 低価格衣料は「デフレの根源」といわれたり、海外の労働力搾取の犠牲・国内産業にダメージを与えるといわれたりすることも多い。しかし、激安就活スーツは、実家からの仕送りゼロの学生が初めて1割を超え、さらに活動期間が延びるという厳しい環境下で、学生の「気持ちを考え」たら「ありがたい存在」となるだろう。

 ちょっとおとぼけなCMが楽しく、何かとだじゃれでKYに持って行く、西友の「KY戦略」。しかし、日本市場で消費者の気持ちを読むことがうまくなってきているように思う。これまでドイツや韓国など先進各国で進出に失敗しているウォルマートが、日本市場に腰を据えて挑んでいることの、象徴ではなかろうか

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2010年3月26日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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