取引先に社員を派遣するときの注意点とは? プロに聞く!人事労務Q&A

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労働者派遣法の規制を受けることも

(2)の「業務委託」は、一定の事務処理を相手方に委託して、その事務を独立処理することを承諾し、その対価として報酬を支払う形の事務処理のための準委任的な労務利用契約です。よって、今回のケースには該当しません。

(3)の「出向」には、在籍出向と移籍出向がありますが、在籍出向は、社員が、出向元および出向先と二重の労働契約を締結していることになり、出向元との雇用関係を継続しながら、労働時間、休暇などの労働条件は出向先の企業の条件に従い、給与などは出向元の企業が支払うことが一般的です。

これに対して、移籍出向は、転籍とも呼ばれ、元の雇用先(転籍元)との雇用関係を終了させ、新しい雇用先(転籍先)の企業との雇用関係が成立します。よって、今回のケースでは、在籍出向の形態での契約が適当な手続きと考えます。

なお、社員との労働契約上の手続きとして、在籍出向は配置転換のひとつになりますので、社員の同意の手続きをとることが必要になります。

現在のところ出向について明確な法の規定はありませんが、次の目的であれば、社会通念上「業務として行われていると判断されない」ことになり、職業安定法や労働者派遣法の規制に該当しないケースとなります。

(1)雇用機会の確保、(2)経営・技術指導、(3)職業能力開発、(4)企業グループ内人事異動

今回の質問のケースでは、(2)の経営技術指導または(4)の企業グループ内人事異動に該当するものと推察します。なお、名目上、前出の4つの目的のいずれかであっても、実態として、事業(収益を計上している場合)として行われている(行われた)場合は、適正な出向とはならず、また、実質上、労働者派遣とみなされた場合は、労働者派遣法の規制を受けます。

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