サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない

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━━2020年夏に「がんばるな、ニッポン。」というメッセージを放映したテレビCMが話題となりました。がんばるな、というメッセージには、どんな狙いがあったのですか?

放映したCM自体は緊急事態宣言下にもかかわらず、経営者は社員に出社をがんばらせないでくださいというメッセージだった。その裏側に込めた思いは日本のガンバリズムに疑問を投げかけたかったというのがある。

このガンバリズムというのは、練習時間が長い人、睡眠時間が短い人、会社に長くいる人というように、がんばりを美徳としているのは本当に意味があることなのですか、ということだ。がんばりの結果として何が得られるのか、その過程で何が得られるのかというのが重要だった。がんばったことそのものを評価するのではなく、その成果物をもっと理解するようにしないといけない。

多くの社員にとっては、企業が前年比でプラス成長するかどうかより、自分の給料が多くもらえることのほうが重要だ。それなのに、企業の競争により社会が発達していくという20世紀にできあがった仕組みが正しい、と私たちは刷り込まれている。いやいや、ちょっと落ち着いて考えてみようよ、手段と目的が入れ替わっていないかと。私たちが幸せになるために企業が成長していくものじゃないの? 企業を成長させるために私たちががんばってしんどい思いで働かなければならないのはおかしい。

会社に出社しなくても仕事は回る

今回のコロナ禍をきっかけに、若い人を中心に働く価値観は変わった。2020年に新卒入社した新入社員の1人は会社に出社したのが8カ月間でわずか3回だけだったという。それでも仕事は回っている。

しかし、昔ながらのオジサンたちは正直、何も変わっていない。緊急事態宣言が終わったから、みんな出社してみんなが対面で顔を合わせて働くのが正しい、と思っている。古い価値観の経営者はマインドチェンジしていかなければいけない。マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう。このコロナ禍をきっかけにパラダイムシフトが起こってほしいと考えている。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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