陸上長距離「トップ選手になぜか双子が多い」訳 遺伝?お互い支え合える?あふれる諸説

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ともに長距離種目に取り組んでいる場合、双子であることがトレーニングの質に好影響を及ぼすと淺川副校長はみている。

「いちばん苦しいところでの踏ん張りの積み重ねが、ランナーの成長には大きく作用する。最も身近なライバルでありサポーターでもある、相方の存在によって、気持ち的にめげそうになったときに、もうひと頑張り自分を追い込むことができる。スランプに陥ってつらいときも、双子の相方に気持ちを引っ張ってもらったり、精神的に支えてもらったりする要素は大きいのではないか」(淺川副校長)

「負けたくないという精神面の影響が大きい」

環境的な要因が大きいという意見は、当事者からも出ている。

「(相方に)負けたくないという精神面の影響がいちばん大きいと思う」と話すのは、現在旭化成陸上部のコーチを務める大西智也さんだ。東洋大在籍時にはエースとして箱根駅伝の初優勝に貢献、その後も旭化成で実業団ランナーとして活躍した。

大西さん自身は、一卵性の三つ子の弟として生まれ、兄の一輝さん(東洋大→カネボウ。2020年3月引退)と「大西兄弟」として話題を集めた。そんな自身の経験から、次のように話す。

「長距離はやはり環境的要因が大きいと思います。同じ年齢の同じサイズの人間が横にいることで、何をするにも競いやすい面はあると思う。とにかく(兄に)負けたくない気持ちは強かった。怪我やうまくいかないとき、もう一人が頑張っている姿を見ると、そこでも負けたくない思いが出るので、あまり気持ちが腐る、ということがなかった」

大西さんがコーチを務める旭化成は、宗猛さんが総監督(茂さんは顧問)、ニューイヤー駅伝でも主力として活躍が期待される、村山兄弟、市田兄弟の双子ランナーが在籍する。

村山兄弟、市田兄弟を見ていて感じる点について、大西さんは「自分の走りやコンディションを、客観的に、いちばん身近な人が見てくれるのは大きい。別の視点からの意見を聞きやすい利点はあると思う。あとは、双子だと『アイツができるなら、オレもそこまでいけるはずだ』と頑張れる部分もあると思う」

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