名将エディーが難敵に仕掛けた壮絶な"心理戦" 「やるかやらないか」それが問題だ

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試合中のこうした小さな揺さぶりが、どれだけ勝利に貢献するかを測る術はない。だが、どんな小さなことでも、戦いに勝つためにやれることはすべてやる。それが私の哲学だ。もちろん、ルールの範囲内であるということは言うまでもない。

こうした小技に相手が反応しなければ、それはそれで別に構わない。自分たちの仕掛けに相手がどういう反応をするかは、相手次第。だが、こうした細かい揺さぶりを使ってまでも勝利に向かって戦う姿勢を見せるかどうかは、自分たち次第である。

オールブラックスには記者会見で先制パンチ

日本代表も目覚ましい躍進を見せた昨年のワールドカップの事例も挙げてみたい。

イングランド代表は準決勝でニュージーランド代表オールブラックスを撃破した。私たちはどんなプレッシャーを世界最強軍団に与え、予想を覆して勝利することができたのか。

1週間かけて行われたこの試合のビルドアップは、私が記者会見で見舞った先制パンチで始まった。

「皆さん、この試合でイングランド代表がニュージーランド代表に勝つと思う人は手を上げてください」

大会のクライマックスとなるこの試合前の記者会見には、世界中のジャーナリストが数多く駆けつけていた。手を上げたのはほんの数人。誰もイングランド代表が勝つなどとは思っていない。

「そのとおり。世界一のラグビーチームとして知られるオールブラックスが、こんな大事な試合で負けるはずはありません。ましてや、大会2連覇中の優勝候補が、準決勝で負けるはずはありません」

ここから私は、いかにオールブラックスがすばらしいチームであるかを徹底的に語った。根っからのラグビー人として、オールブラックスの試合は子どもの頃からいつも観ていた。私にとって憧れの存在でもある。

「オールブラックスが負けるはずがない」。月曜日の記者会見から、メディアの見出しを飾るフレーズを放つ。

翌日の記者会見では今度はオールブラックスのヘッドコーチが記者たちの質問攻めにあう。こんなことになるとは思っていなかったヘッドコーチは、何とか無難な答えを出そうと考えることになった。

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