「日本株は1ドル=90円台突入で急落」は正しいか 「ドル安円高論」と日米企業の業績を検証する

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そのため「アメリカの景気が悪いなら株も通貨も売りだ」として、主要な株価指数は軟調に推移し、ドルは売られて対円で1ドル=103.50円を割り込んできた。そこへこのFOMCの声明で追加緩和期待が剥落し、株価は一段と売られたいっぽうで、ドルは買い戻しが入った。

こうした緩和期待に対する失望から市場を救ったのが、FOMC直後のパウエル議長の記者会見だった。

新型コロナウイルスの流行が経済に与える影響については、ワクチンが開発されたとはいえ「今後数カ月が試練だ」と語る議長に対し、記者からは当然のことながら「今後数カ月が試練だと言うが、なぜ資産購入期間の延長などをしないのか。追加緩和の措置はないのか」という質問が飛んだ。

これに対して議長が、「アメリカ国債の購入などできることはある」「資産購入は必要に応じて柔軟な選択肢がある」と答えたため、追加緩和期待が残る形となった。

こうした議長の応答で、市場の緩和期待がつながり、会見後は株高、ドル安方向へまた振れ戻る結果となった。ただ、議長発言で市場が再度安定できた背景には、「連銀はきっと効果的な追加緩和策を打ち出してくれる」という信頼感が多くの投資家で共有されていることが大きい、と推察している。

日本は「手詰まり感が強い」とすると?

一方、日本では17日から18日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催された。事前には市場に金融政策の変更に対する期待は、まったくなかっただろう。

もちろん、2021年3月に期限を迎えるコロナ禍における企業の資金繰り支援策は同9月まで半年延長された。ただ、実質的に追加緩和と言える金融政策の変更は、皆無だった。

ただし、2013年1月にインフレ率2%の目標が導入されて以来、一度もその目標は達成できていないため、日銀は2021年3月の金融政策決定会合までに「なぜ達成できていないのか、各種の施策を点検する」と表明した。

点検の結果「これが足りないと判断するので、それを補う追加緩和を行う」という展開になると予想する声も聞くが、大多数の投資家は「もう日銀にできることは何もないだろう」と考えているようだ。

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