サッカー日本代表は「たらこスパゲッティ」だ ザッケローニ監督に学ぶ、日本が世界で戦う秘訣

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人間万事塞翁が馬

こうして、日本流とイタリア流をミックスし、新しい価値を生み出してきたザックジャパン。

そんなザックは、他の一流監督と比べると、かなり地味にも見える。例えば、スペインのレアル・マドリードや英国のチェルシー等、世界最高峰のチームを率いてきたモウリーニョ監督なら、「お前たちはすごい。だがそれを証明するには勝て!」という勝者のメンタリティを植え付けようとするだろう。だが、ザックは違う。
彼が良く使うのは、イタリア語で「Dacosa nasce cosa」(ダコーザ・ナッシェ・コーザ)。日本語で言えば「人間万事塞翁が馬」、つまり人生はどう転ぶかわからないということだ。

ザック自身のキャリアもそうだ。10代で病気になってプロの夢を諦めたことが、後の監督のキャリアにつながった。素人監督時代、何度も馬鹿にされ、研究を続けたことが、後のトップ監督で通用する理論構築の土台になった。
常に挑戦をしてきたから、今があるのだ。ザックは、就任時に、「イタリア人の日本代表監督は、前例のない初めての挑戦。だからこそ、意欲が掻き立てられた」と言った。

日本もかつてはW杯に出られなかった。アジアの中ですら、勝てなかった。それでも本田選手や香川選手のように、挫折を恐れず新しいチャレンジをする選手が出てくる中で、世界のトップも認めるまでに、レベルがあがってきた。挫折があるからこそ、次がある。新しい挑戦をしてこそ未来がある。挫折をしていない男とは、チャレンジをしていない男だ。

過去からの、選手やスタッフの数え切れない挫折を経て、今、日本代表がブラジルのピッチに立つ。ザッケローニ監督の数々のチャレンジを経て、「たらこ」と「スパゲッティ」を組み合わせた日本代表は、南米料理や欧州料理に勝るはずだ。これを、是非ともブラジルで見せてもらいたい。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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