箱根駅伝3位「国学院大」支える42歳名将の凄腕 1月2~3日の本番に向けて今年も虎視眈々

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「箱根駅伝で好成績を収め、その勢いを切らさないようにしなければならないと思っていたのに、新型コロナウイルスの感染拡大……。このタイミングで試合がなくなったりと、あらゆることがストップしたのは、正直に言って、かなりの痛手でした」

前田がこう振り返るように、さらに勢いづこうとしていた矢先の新型コロナ禍だった。緊急事態宣言下は、大学のトラックを使用できないなど、練習環境を確保することさえままならない状況だった。もちろん全体練習も制限され、練習は各自に委ねるしかなかった。

だが、前田の心配をよそに、その間にも学生たちは自分たちで考え、質・量ともに高い練習を自身に課して、トレーニングに励んでいた。むしろ、平時よりも速い設定タイムで臨んでいた者もいたほどだった。

「いい土壌ができてきた」と前田が言うように、昨季までのチーム精神は、新チームにもしっかりと引き継がれていたということだろう。

練習メニューと設定タイムを選手に選ばせる

実は、前田は、箱根予選で敗退した2015-16年シーズンを境に、指導スタイルを大きく転換させていた。

それまでは“この練習をすればこうなる”という考えを選手への指導に落とし込んでいたが、その後は、練習メニュー、設定タイムをいくつか提示し、そのうちどれをやるかは選手に選ばせるようにしたのだ。こうやって自主性を重じて強化を図ってきたことが、この新型コロナ禍に生きた。

実際に、緊急事態宣言が解除されてレースが再開されると、藤木宏太(3年)、中西大翔(2年)がトラックの5000m、10000mで、昨年度の浦野を上回る記録を叩き出した。現在は中西がその2種目で国学院大記録を保持している。

また、前回の箱根は不出場だった臼井健太(4年)が大きく成長し、主力に数えられるようになった。主将の木付琳(3年)、副主将の河東寛大(4年)は、前回の箱根の1カ月後にハーフマラソンの自己ベストを大きく更新し、秋にも10000mで好記録をマークしている。

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