Aaaの政府格付けは回復の足取りが弱い中でも安定した位置づけにある《ムーディーズの業界分析》

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米国
GDP成長率:第1四半期は高い伸びを示したが…?

実質GDPは、09年第3四半期に2.2%増加し、第4四半期には年率5.9%という比較的高い伸びを示した。しかし、4四半期のGDPの伸びの半分以上は、在庫積み増しの結果であった。個人消費支出の伸びはわずか1.7%にとどまり、前四半期の2.8%から減速した。09年の家計貯蓄率は、レバレッジ引き下げによる支出パターンへの影響を反映して、07年の2倍以上の4.3%に達した。消費の力強い伸びを抑制したもう一つの要因は、失業率である。09年第4四半期の平均失業率は10%で、1~2月には9.7%に低下した。

GDP成長率の推移パターンと高失業率を考慮すると、今後の景気回復の勢いが疑問視される。連邦政府予算は、10年の実質成長率を2.7%と想定しており、民間調査機関の予想は、それを若干上回る。これは、「ITバブル」崩壊後の緩やかな景気後退期を含む07年までの10年間の平均成長率に届かない。同10年間の消費支出の伸びは年率平均で3.6%だった。短期的に、消費支出がこのペースで伸びる可能性は低い。最終的には、米国経済がより速い速度で成長し、歳入増が財政再建に寄与できるかどうかは、消費の伸びの回復にかかっている。財政再建の必要性、住宅市場の低迷(とはいえ、安定化している)、企業の設備投資に影響を与える低い稼働率を見ると、他のセクターが成長の強力な牽引役になる可能性は低い。

フランス

フランス経済は、他の多数の先進国に比べ好調に推移している。GDPは09年に2.2%減少した。これはフランスが戦後経験した中では、最も厳しい景気後退となったが、他の先進国に比べれば小幅にとどまり、当初の予想よりも緩やかであった。比較的好調なパフォーマンスは主として、家計消費の弾性の高さ(危機発生時、フランスの家計の負債水準は比較的低く、バランスシートのレバレッジ引き下げを急ぐ必要はなかった)と、自動安定化装置の広範に及ぶ効果に起因する。フランスでは09年第4四半期のGDPが0.6%増加するなど、他の欧州主要国に比べ景気回復の基調は安定しているとみられ、家計消費が引き続きこれを下支えすると予想される。10年の実質成長率1.4%という政府目標(0.75%から上方修正)は、実現不可能ではない。

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