Aaaの政府格付けは回復の足取りが弱い中でも安定した位置づけにある《ムーディーズの業界分析》

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 危機が始まった時点で、英国のレバレッジ(GDPに対する民間・公共セクターの債務の比率)は非常に高かったため、他の多くの国に比べ、レバレッジ引き下げの影響が大きく、かつ長期にわたるとみられる。すでに実施された調整、特に家計貯蓄の調整と、海外の環境が改善したことを考慮すると、景気が二番底に陥るリスクは小さいとみられるが、長期にわたって成長率が小幅にとどまるリスクは残っている。

回復ペースの遅さが、債務負担能力を圧迫するリスクがある。税収の回復が当初の予想を下回り、その時期も遅れる可能性がある。これが、政府歳入に対する債務返済コストの比率で示される政府の債務負担能力の継続的な悪化を加速している。危機が始まった時点では公的債務の水準が比較的低かったため(グロスベースでGDPの44%)、財政余地が生まれ、政府が多額の財政赤字という形で、民間セクターの貯蓄率上昇の影響を緩和することができた。

現在、政府はこの財政余地を最大限使用しており、公的債務が急速に増加している。現時点の政府見通しによると、公的債務は今後数年間にわたり、GDPの約90%の水準で安定するとみられる。税収が十分な速さで回復しない場合、債務水準がさらに上昇する可能性がある。

債務水準が上昇すれば、政府の調達コストに対する債務負担能力の感応度が高まる。これまで、英国政府は良好な市場環境の恩恵を受けてきた。英公債管理局は通常、英国の長期名目潜在成長率を下回る金利で長期債務を発行してきた。量的緩和政策の一環として中央銀行が国債1980億ポンドを買い入れたことが(同期間に公債管理局が売却した国債の総額を40億ポンド上回る)、どの程度、国債価格を政府に有利となる方向に歪めたかは議論の余地がある。

とはいえ、IMFの当初の推定である40~100bpsがおおむね正しいとすれば、2月4日に中央銀行が発表した国債買い入れの中止は、利回り上昇リスクとなる。少なくとも、政府は市場のより直接的な監視の目にさらされることになろう。

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