ユーロ高は、終わったのか 敏腕アナリストが分析する為替相場

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(1)は銀行の貸出に応じて資金供給をする措置で融資促進を目的としたものだ。(2)は低金利政策の長期化、(3)は2010年に実施したSMP(周辺国国債の買取り)で市場に供給された資金の吸収を止め、流動性を放出するものだ。ECBはさらに今後の政策として、ABS(資産担保証券)の買取りに関する準備を強化すると発表している。こうした措置は貸出促進や資金供給を通じて、金融環境を緩和する措置となっている。

ECBの緩和スタンスで、ユーロ安へ

マイナス金利や信用緩和策は、ユーロ圏の市中短期金利(EONIA)の低下につながろう。ただ、信用リスクなどを踏まえると、EONIAは0%程度で下げ止まる見通しだ。欧州国債市場では、特に5年ゾーンまでのドイツ国債利回りの低下につながると見られるほか、周辺国の対独スプレッドを抑制するだろう。

為替相場については、ECBの追加緩和策が実質金利の押し下げ、および投機筋のユーロ売りポジションの拡大につながるかどうかが、焦点となろう。昨年以降のユーロ高の背景には、期待インフレ率の低下を通じた実質金利上昇と、投機筋のユーロ買いポジションの積み上がりがあったと見られるためだ。

今後はECBの緩和政策を背景に、ユーロ圏の実質金利が低下するかどうか、そして投機筋がユーロ売りのポジションを拡大させるかどうかが注目される。ECBのバランス・シートが再び拡大する可能性や低金利政策の長期化により独米金利差の拡大が予想されることを踏まえると、ユーロ安圧力も徐々に強まっていく可能性が高いだろう。当社はユーロ/ドルについて、6ヵ月先を1.32、12ヵ月先を1.27に、一方、ユーロ/円については、6ヵ月先を139円、12ヵ月先を133円と予想している。

門田 真一郎 バークレイズ銀行東京支店 為替ストラテジスト

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かどた しんいちろう

 

米UCLA経済学部卒。2008年バークレイズ証券株式会社に入社。調査部にて銀行戦略調査を担当した後、 2009年に外債ストラテジー・チームに異動し、米国を中心にカナダ・メキシコを含む北米地域の経済・市場動向の調査を担当。 2013年にバークレイズ銀行に異動し、為替ストラテジストに就任。海外拠点の為替・金利・経済チームとのネットワークを活かし、為替市場見通しのほか海外経済・政治動向などについて幅広い情報提供を行っている。

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