80歳の私が政府のコロナ対策に強く切望する事 通常医療を保って救える命を守れるように

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先日、箱根に旅行した人から聞いたことです。

泊まったのは、箱根でも有数の観光ホテル。全館、ほぼ満室。  

GoToトラベルで、高級ホテルに安く泊まれるまたとないチャンスと考えられているのでしょう。

箱根には、始めて来たような人が多く、学生さんらしい人も多かったとのこと。

新型コロナの感染が拡大している中で観光旅行に出かけたり外食をしたりするのは、「人々と接触してコロナに感染したとしても、重症化する危険は少ない」と考えている人たちです。

それは、若い健康な人たちです。

基礎疾患を持っている人や高齢者は、割引があるからといって観光旅行に出かけたり外食をしたりはしません。

そして、GoToキャンペーンでは支出の一定率が補助されるので、安宿よりは高級ホテルに泊まろうとします。そのほうが、補助額が大きくなるからです。その結果、高級ホテルが満室になるのです。

これは、統計でも確かめることができます。

法人企業統計調査で宿泊業の売上高の対前年同期比を見ると、大企業(資本金10億円以上の企業)では、4~6月期の71.9%減から、7~9月期には42.8%減へと改善したのに対して、零細企業(資本金1000万円以上~2000万円未満)では、4~6月期が90.0%減、そして7~9月期も79.7%減のままです。

このように零細企業はGoToキャンペーンの恩恵を受けているとは思えません。恩恵を受けているのは、大企業と若い健康な人々です。

GoTo延長の一方で一時停止

新型コロナウイルスの新規感染者数が増え続ける中で、政府は12月8日に決定した追加経済対策では、GoToキャンペーンの2021年6月までの延長を決めました。

そして、12月14日には、感染拡大に押されて、GoToトラベルの一時停止を決めました。

私は、社会的トリアージ政策には絶対反対です。そして、日本政府はこの戦略を採らないでほしいと、ずっと願ってきました。

SNSの発信は若い世代が中心です。60代以上の高齢者になるほど、インターネットの利用率、スマホの保有率は下がり、その声はSNSではあまり現れません。なんとか、コロナ弱者である高齢者の声が、政策当局に届いてほしいものです。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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