「成長戦略」には、幻想を抱くな 1万5000円台回復の日経平均、今後はどうなる?

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筆者は、海外市場の動きを重視して日本株市場を考えており、それを踏まえて日本株のアップサイド余地があると判断する。6月以降の米金利上昇など海外市場の環境が変わらないなら、一段高もありえるので、米国や日本の景気指標が怪しくなるまで、上値を追えるかもしれない。逆にいえば、海外市場や国内景気の状況が変わる兆しがあれば、即利食いを決断することをお勧めしたい。

「成長戦略」に幻想を抱くのは禁物

一方で、日本株市場の値動きを、国内要因であるアベノミクスの観点で結びつけて解釈する見方もある。これは正しいのか。先日、「とある会合」で、市場関係者の話しを聞く機会があったが、やはり、アベノミクスを通しての見方が多かった。「安倍政権は株価を相当意識している」。だから、安倍政権は「成長戦略、法人減税」などに着手しており、これらが5月末以降の株高をもたらしている、という解釈だ。

もし、こうした考え方が正しければ、株高の持続性は、政策対応の進捗とそれらに対する市場の期待の変化を考えることが必要になるだろう。だが、筆者は、こうした考え方は「あまり生産的ではない」と考えている。

確かに、日本株が2013年のアベノミクス発動で生まれ変わったのは事実であり、国内の経済政策は重要である。だが、先に挙げたような安倍政権の政策は「悪くないメニュー」とはいえ、日本経済の正常化や景気回復を後押しする本質的な政策メニューとは言い難い。脱デフレに直結する金融緩和政策との比較では、無視できるほどの極めて小さな効果しか期待できない。

有名メディアなどでは「株高が続くかどうかは成長戦略がカギ」と書いているではないか、と疑問に思う方もいるかもしれない。だが、そういう解説を書く記者にとっては、相場と成長戦略と結びつけると、大きな記事として扱われやすいという事情がある。また、政治と相場を結びつけると、市場関係者を含め自らの政権評価と政治シナリオをもとに相場を語れるし(面倒な景気指標の点検や、海外市場の分析は不要)、「霞が関」を取材先としている記者は「強み」を生かすことができる。読者の皆さんには、有名メディアの論調は、そうした「バイアス」がかかりがちなことを、ぜび、認識していただきたい。

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