世界の事例に見る「規制」と「利点」--解禁へ向け動き出したインターネット選挙運動[6]

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 これまでの連載で触れてきた各国における、インターネット選挙運動に使用されてきた主なツールを列挙すると、電子メール、ウェブサイト、ブログ、SNS、動画、ツィッター、オンライン広告、ネット献金となる。それらはほぼすべて、政治活動期間中の日本では現行法でも使用可能なのだ(もっともオンライン広告は、事前の売名活動とされる可能性も高く、政治活動期間中といえどもすべて合法とは言い切れない)。

オバマ登場後の選挙戦においては、まずそのツールを勉強し、取捨選択することが世界的に見て必須条件となっている。09年ドイツの事例(第5回参照)では、そうしたツールを表面的に模倣するだけにとどまり、国民の心をつかむことができず失敗という評価に終わった。ドイツにおける失敗事例も、各国は研究して今後の選挙戦に臨んでいくだろう。

最近の特筆すべきツールとして2点紹介したい。

1つ目は、「Googleアプリケーション」だ。10年米国マサチューセッツ州の連邦上院議員補欠選挙において、勝利者のスコット・ブラウンはオバマ以降の選挙戦術をすべて学び、さらにその後の革新も学び、この武器をフル活用して勝利につなげたという(http://blogs.wsj.com/digits/2010/01/19/how-scott-brown-used-google-to-get-results-in-mass-election/)。

最大の武器はGoogle Adwardsの利用だった。マサチューセッツ州に住む有権者をうまく誘導し、検索エンジンやGmail、YouTubeを使う中で知らず知らずのうちにスコット・ブラウン候補者の広告を見せることに成功した。

同候補者は選挙スタッフにもGoogleアプリケーションを使わせ、コストを削減しつつも、作業の大幅な能率向上を実現したという。

もう1つは「逆SEO対策」である。SEOとは、いかに検索結果に載るかという仕組みだが、ある意味その逆として、いかに検索結果に悪評が載らないか、という仕組みを「逆SEO」と呼ぶことがある。ビジネスの世界では、検索エンジンにおける風評被害を防ぐためにかなりの需要があるという。インターネット選挙運動が解禁されそうであるという流れに合わせ、「政治家向け誹謗中傷対策サービス」を始める会社も現れているのだ(http://www.eltes.jp/news100222.php)。

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