ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 「実体経済浮揚には、3~4四半期程度かかりそう」

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 6月5日、ECBは主要政策金利を過去最低となる0.15%に引き下げた。フランクフルトでの記者会見(2014年 ロイター/Ralph Orlowski)

[フランクフルト 5日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は5日、主要政策金利のリファイナンス金利を過去最低となる0.15%に引き下げた。

中銀預金金利もマイナス0.10%に引き下げた。マイナス金利の導入は初めて。

理事会後に開かれた記者会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。

<ABSに対する海外の需要がユーロ高招く可能性> 資産担保証券(ABS)に関して検討しているが、取り組むべき別の要素もある。シンプルかつ透明性が高いABSに対する過度な差別を排除するため、規制の見直しが必要だ。 こうした努力が実り、国際的に魅力の高いABSが生まれれば、著しい規模の資金が中小企業へと流入する。これは大きな成功で、欧州にとってはひとつの資本市場の回復を支援するとともに、危機を招いた重大な要因の1つである分断の解消を促すことになる。 私はこうした恩恵を為替レートより重視する。

<ユーロ>

ユーロ圏経済に関心を持つ投資家からの資金流入がユーロ上昇の一因となっていたが、前四半期に和らいだ。

<今回発表した措置の効果が表れる時期>

金融政策およびフォワードガイダンス再確認:

金利は長期間、おそらくこれまでに想定されていたよりも長期間低水準にとどまる。これが金融市場の状況に波及することになる。

いつ効果が表れるか:

金融市場では即時の効果を確認できる公算が大きい。一連の措置による実体経済への効果は遅れて表れることになる。恐らく3、4四半期程度の時間がかかる見通しだ。

<決定は全会一致> 今回の政策決定は全会一致だった。 <まだ終わっていない> 今回決めた措置は大掛かりであると考えるが、これで終わりかと問われれば、その答えはノーだ。われわれはまだ終わっていない。必要であれば責務の範囲内で(行動する)。 <金利は下限に到達> (金利は)事実上、下限に到達したと考えている。

<ABS・MRO> ABSに関する準備作業については、ユーロ圏の非金融民間部門の資産を裏付けとした、シンプルかつ透明性の高いものをユーロシステムが買い入れることを検討する。 主要リファイナンシング・オペ(MRO)については、固定金利でのオペ全額供給を必要な限り実施するとともに、少なくとも2016年12月の積み期間終了まで継続することを決定した。

<的を絞った長期リファイナンスオペ>

すべての的を絞った長期リファイナンスオペ(TLTRO)資金は2018年9月に期限を迎える。オペでは当初、対象金融機関によるユーロ圏の民間非金融部門への総貸し出しから家計の住宅購入向けローンを除いた額の7%に相当する借り入れが可能になる。

当初予定総額は4000億ユーロ。TLTROは2014年9月と12月に実施する。

これに加え、2015年3月から2016年6月までは、オペ対象機関はすべて、ユーロ圏民間非金融部門への純貸出から家計の住宅購入向けローンを除いた額の最大で3倍の資金を四半期ごとに借り入れることが可能になる。

<SMP不胎化の停止>

主要政策金利引き下げ、より期間の長い的を絞ったリファイナンスオペ、ABS買い切りオペに向けた準備、固定金利でのオペ全額供給継続に加え、証券市場プログラム(SMP)の下で供給される流動性の週間不胎化オペ停止も一連の措置に含まれる。

<緩やかな回復継続> (第1・四半期の域内総生産(GDP)が前四半期比0.2%増加したことについて)緩やかな景気回復が継続していることを裏付けた。最近の調査では、第2・四半期も緩やかな伸びとなる可能性を示唆している。 成長見通しを取り巻くリスクは依然下向きだ。

<必要なら迅速な行動>

必要であれば、ECBとして追加金融緩和を伴い迅速に行動する。また低インフレ期間が過度に長引くリスクに対し、さらなる対応が必要な場合、ECB理事会は責務の範囲内において非標準的措置を用いる方針で一致している。

<一連の措置>

実体経済への融資促進に向けた一連の措置について決定した。主要政策金利引き下げやより期間の長い的を絞ったリファイナンスオペ、ABS買い切りオペに向けた準備、固定金利でのオペ全額供給の継続が含まれる。

<フォワードガイダンス>

現在のインフレ見通しに基づき、ECBの主要政策金利は長期間、現行水準にとどまる見込みだ。

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