コロナ禍でもウォルマートが強みを見せた理由 新宅配サービスを即発表したアジャイル型組織

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同社はかねて、材料費・間接費・人件費・関税・在庫管理費・梱包費に鑑みた事業データの把握と可視化を高度化するシステムを構築し、加えて、社員には外部サプライヤーを含めた部門横断のコミュニケーションを重視する文化やルールを浸透させてきた。

例えば、資材担当者とサプライヤーとのミーティングの頻度を「リレーションシップ・レシオ」という指標で管理し、これによってコミュニケーションの頻度や質を評価している。

新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンでAGCOの韓国工場が操業停止に追い込まれるかどうか、というとき、同社は2、3日前にロックダウンを予測し、それに間に合うように出荷を加速することで在庫滞留を未然に防いだ。さらに、ロックダウン解除後に、社員が安心して工場・職場に戻れるよう、マスクや手袋などの備品を調達しておくことも事前に決定していた。

AGCOは、各拠点のこうしたベストプラクティスをグローバルに展開することで、サプライチェーン全体へのダメージを最小限に抑えることに成功した。このような施策を実現できたのは、情報が集まってくる現場に権限を付与し、少人数のチームで状況を精査し、状況の動きや変化を高頻度のリモート会合で見ながら具体的な対応策を講じていったからにほかならない。この取り組みはまさにアジャイル型組織の本質といえる。

日本企業の3つの課題と解決へのアプローチ

テレワークでは、コミュニケーションを担保できるツールを駆使する必要がある。各メンバーがさまざまなツールを試しながら最適解を見いだすのがアジャイルの考え方だからである。もちろんツールが乱立し、セキュリティーが脅かされることがあってはならない。セキュリティーポリシーは本社が策定し、そこをアジャイル型組織の試行錯誤の場とすることが望ましい。

次ページ日本企業にとってアジャイル型組織への変革は容易ではない
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