がん寛解した笠井アナに妻が放った衝撃の一言 自分のために働いてきた人生の大きな転換点

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半年間仕事ができないことによって私はゲートの中でスタートの合図を待っていきり立つ競走馬のような精神状態になっているのです。今までの分を取り返そうとまた猛烈に働きたいと思っている自分が一方にいます。

しかし、そんな働き方をしていたらまたすぐに体を壊してしまうことは目に見えている、と妻は言います。そこそこの忙しい生活にならないかな? そんな都合の良いことも考えます。
これからの人生はもっともっと家族の笑顔を見ていたいのです。

正直言って病気になる前は、たくさんたくさん働いて人気者になるのが夢でした。求められていない作業にまで手を出して評価とスキルを上げようと、がむしゃらになっていたサラリーマン局アナ時代でした。それはそれで1つの結果となって私の局アナ人生の支えとなっていました。

しかし悪性リンパ腫というがんは「そうではない生き方が、次の人生の幸せなのかもしれない」と気づかせてくれました。

新しい人生を選択する力を与えてもらった

人生観が変わるというのはこういうことなのでしょう。ガラッと変わるのではなく、これだけの大病をしたのだから、少し別の生き方をしてみようかと、線路のポイントを切り替える力を与えてもらったということ。

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そのポイントを変える力こそが「生きる力」であり、そういう新たな人生を選択する力を、私は悪性リンパ腫に与えてもらったのだと思っています。

おそらく簡単にはそのポイントは切り替えられないでしょう。ポイントを切り替えた先の線路がまだまだ建設中だからです。これまでのがむしゃら路線の方がしっかり強固に先が見えています。こうすればこうなるということが経験によってわかっています。

でもそれでは何も変わりませんし、面白くありません。

自分の中に生まれた新たな「生きる力」で今まで自分が選ぶことのなかった道を歩みたい。がんによって与えられた力によって、「新しい笠井信輔」を家族にも、皆さんにもお見せしたい。いまは、そんなふうに思っているのです。

笠井 信輔 フリーアナウンサー

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かさい しんすけ / Shinsuke Kasai

1963年、東京都生まれ。早稲田大学を卒業後、フジテレビ入社。アナウンサーとして、「とくダネ!」など、おもに情報番組で活躍。2019年10月、フリーアナウンサーに転身。直後、ステージ4の悪性リンパ腫であることが発覚。12月より入院、治療を始める。ブログで闘病の様子をつづり、ステイホームの呼びかけも行った。2020年6月に完全寛解し、7月から仕事に復帰した。著書に『増補版 僕はしゃべるためにここ(被災地)へ来た』(新潮文庫)。

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