ワクチン接種後の「睡眠不足」が何ともヤバい訳 免疫を獲得したいなら必ずしっかり寝てほしい

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徹夜したグループのうちの数名は、獲得した抗体があまりにも少なく、改めてワクチン接種を受けなければなりませんでした。もう一方のしっかり眠ったグループは全員、何ら問題なく抗体を獲得できたことから、睡眠は予防接種の効果を左右する極めて重要なファクターといえます。

ナチュラルキラー細胞は「夜」活性化する

ワクチンを接種したときにいちばん大切なのは、とにかくぐっすり眠ることなのです。

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また、ワクチンの接種後だけでなく、日々の睡眠と感染症リスクは密接に関わっています。夜、しっかりと眠ることは体の免疫力をキープするうえで欠かせません。

体内の自警団は「ナチュラルキラー細胞」と呼ばれています。私たちの体の細胞をチェックする役割を担っており、がん細胞の破壊などを行ってくれる貴重な保護細胞です。

このナチュラルキラー細胞は眠っている間に活動するのですが、夜のホルモンである「メラトニン」が分泌されると、それが自警団出発の合図になることがわかっています。

就寝前にメラトニンを分泌させ、ぐっすり眠るために、私は次のような睡眠法をお勧めします。

① 日中(できれば午前中)多くの時間を屋外で過ごし、可能なかぎり日光をたくさん浴びる
② 運動は「午前中・屋外」で。少なくとも、就寝3〜4時間前にはトレーニングを終える
③ 夕方〜夜にかけて、コンピュータ、スマートフォン、タブレットのブルーライトを避ける
④ 15時以降のカフェイン接種を控える
⑤ 暗い寝室で眠る。ほんのわずかの光でもメラトニンの分泌量が減る
⑥ 夜中に目が覚めても、明かりをつけない

世界がコロナウイルスに脅かされている今、とにかくお伝えしたいのは「今こそちゃんと眠ってほしい」という一言に尽きます。そしてワクチンが完成し、接種をしたなら、その晩はぐっすり眠ることを最優先してほしいと強く願います。

クリスティアン・ベネディクト スウェーデン・ウプサラ大学准教授、睡眠研究者

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Christian Benedict

1976年、ドイツ・ハンブルク生まれ。スウェーデン・ウプサラ大学准教授、神経科学者、睡眠研究者。キール大学の栄養科学修士課程を修了。リューベック医科大学で神経内分泌学を研究、博士号を取得。2013年よりウプサラ大学の教壇に立つとともに、同大学の睡眠研究を牽引。

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ミンナ・トゥーンベリエル ジャーナリスト、作家

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Minna Tunberger

ジャーナリスト、作家。約20年にわたり、スウェーデン通信(TT)や日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」等の主要メディアに健康をテーマにした記事を執筆。

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