アップルが見せた「打倒アンドロイド」の秘策 iOS8の最大の特徴は”オープン化”

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3つ目の方向は、開発者の視点から見て、より魅力的な、新しいアプリケーションを作りたくなる基本ソフトとなるよう、開発基盤を強化することである。一般消費者からは見えにくい部分だが、実はiOS8でもっとも進化したのは、実はこの部分だ。

まず、アップルはアプリ間の連携を高める機能を追加した。これまで複数のアプリを組み合わせ、ひとつの作業を進めるといったパソコン的な処理フローに大きな制限があったが、iOS8ではセキュリティを高めながら連携する仕組みを提供する。こうすることでアプリの応用範囲は広がり、連携することを前提にした、より専門性の高いアプリの登場も期待できる。

パートナー企業にソフトウェアキーボードの開発を許した点もトピックと言える。これまで文字入力用プログラムの追加、挿し換えをアップルは許していなかったが、今回の変更で、たとえば日本語ならばジャストシステムが参入し、iPhone、iPadに対してATOKを提供可能になる。

METALと呼ばれる新しいグラフィックスライブラリも興味深い。これはいわば、iOS版のDirectX(マイクロソフトがゲーム向けに提供している機能。ゲーム以外でも広く使われている)のようなものだ。強化が続くスマートフォン向けGPUの能力を、より効率よく活用可能になるため、流麗な3Dグラフィックスを用いたソフトウェアを、より低消費電力で開発できる。

そして開発者中心の来場者がもっとも興奮したのが、Swiftというアップルオリジナルのプログラミング言語の紹介だ。アップルによれば、Swiftを用いればフル機能のiOSアプリを、より簡潔に記述可能になり、また端末のパフォーマンスを高めることが可能になるとのこと。開発者会議であるWWDCでは、このSwiftを中心に多様なセッションが組まれるに違いない。

前述したように、スマートフォン市場の成熟が進んだことは明らかで、基本ソフト側からのアプローチで、大きなイノベーションを起こすことは難しい状況になっている。もはや多数派となり、社会インフラとなってきたスマートフォンは、新勢力の象徴から旧勢力の象徴への道を歩み始めているからだ。

そこでアップルは、iOSの“解放”を始めようとしている。iPhone/iPadの元に集まったデベロッパーにiOSの一部を託し、新たな市場ジャンル開拓のスペースを用意し、より効率的で魅力的な開発環境を提案することで、プラットフォームとしての足固めを狙っているのだと思う。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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