広がる自転車通勤、環境と健康に貢献だが意外なリスクも潜む

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 一方、08年に施行された改正道路交通法では、小学生以下の子どもと高齢者以外は、基本的に自転車は車道を走行し、やむをえない場合は歩道走行も許されるが、歩行者の妨害をしないことと定められている。

自転車事故というと自動車との接触事故を想起するが、国土交通省のデータによると1997~07年の10年間に、自動車との接触事故は減少しているが、歩行者との接触事故は4・5倍に増加している。歩行者の安全が脅かされているのだ。

自転車の性能は向上している。電動アシスト付き自転車や、軽量、多段変速で時速20キロメートルを超えるスピードが容易に出る自転車が増えている。高性能な自転車が歩道に乗り入れること自体、本来危険である。

また、レジャーサイクリング人気を機に推奨されている長距離走行用のセッティングも、実は事故のもとだ。一日に100キロメートル以上を、時には自動車をしのぐ速度で走る上級のサイクリストにとって、最大筋力を生かせるサドル高やハンドル位置などのセッティングは重要だ。だが、彼らは歩道は走らない。歩道に上がるときは自転車を降りて押して歩く。原動機付き2輪車などと同じ扱いだ。自転車は「軽車両」であり、道路交通法が適用されるからだ。

しかし、走行距離数キロメートル、時には歩道に上がろうという自転車が、アスリートのまねをすることには危険が伴う。サドルに腰を下ろした状態で、つま先が地面につかないようなセッティングでは低速時の走行が不安定となるため、ついスピードを出し、緊急時に止まれず事故につながる可能性が高い。

さらに問題は、自転車の乗り手が道路交通法を知らない、あるいは守らなければならないという自覚に乏しいことだ。

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