「バイデン次期政権」の閣僚がやたら地味なワケ 「派手目な政治家」は、たった1人しかいない?

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その空席は選挙区の州知事が指名することになっている。例えばカマラ・ハリス上院議員が次期副大統領となって生じる空席は、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事(民主党)が決めるから問題がない。

しかしエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)やバーニー・サンダース上院議員(バーモント州)の場合、州知事はいずれも共和党だ。彼ら左派議員を閣僚に起用すると、それだけで上院の貴重な1議席が失われてしまう。このことは民主党内左派の苛立ちのネタになるとともに、最近のアメリカ株の買い安心材料のひとつとなっている。

女性初の国防長官は「当確」のはずだったのに・・・

バイデン人事の脆弱性は、外交・安保スタッフの中に国防長官が含まれていないことにも表れている。アメリカの主要閣僚の中でも、国防総省と財務省はまだ女性長官が誕生していない。そこで次期国防長官は、ペンタゴン生え抜きのミシェル・フローノイ元国防次官であろう、というのが従来からの「読み筋」であった。仮に4年前にヒラリー・クリントン氏が当選していれば、その時点で女性初の国防長官は「当確」、と言われていた人物である。

その名前がリストから漏れているのは、党内左派が反対しているから、と伝えられている。フローノイ氏は左派から見れば「タカ派」に映るし、さらに防衛産業にも近過ぎると言うのである。

もっともバイデンさんは調整型の政治家である。こんなことでめげる人ではない。あれだけ長いこと上院議員を務めていながら、「バイデン法案」と呼ばれるものは1本もない。誰からも愛される一方で、人間関係を活かして裏方に回って汗をかくタイプなのだ。

日本でいえば、渡部恒三衆議院議員のような「国対族」の政治家と言えようか。渡部氏も含めかつての竹下派七奉行の中で橋本龍太郎氏、小渕恵三氏(いずれも故人)が何をやったかは皆が覚えていよう。ところが「平成の黄門さま」ことコーゾー先生の業績はと問われると、皆が一様に首をかしげる。それはそうだろう。ご本人が「命も要らず、名も要らず」というタイプでないと、そもそも国対族は務まらないのである。

そんなバイデンさんであるから、こういう機微な人事は苦手ではないはずだ。むしろ「前門の共和党、後門の民主党左派」と板挟みになっている方が、力を出しやすいタイプと言えるかもしれない。

何しろ次期政権は、ねじれ議会を相手にしなければならない。上院で過半数に足りないとなると、民主党の予算や法案は一切通らない。大型増税もインフラ投資もグリーン・ニューディールも所詮は「絵に描いた餅」である。だからこそ、バイデンさんのキャリアと人脈が意味を持つ。とりあえず共和党のミッチ・マコーネル院内総務とは、年も同じ(78歳)だし上院での長い親交がある。

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