アメリカに「団結と癒やしの時代」は来るのか 慶大・渡辺教授が語る「バイデン政権」の課題

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――バイデン氏が閣僚・高官人事の第1弾として外交・安全保障チームの人事を発表しましたが、どう評価しますか。

いずれも実績があり、基本的に現実的な見方をしている人たちなので問題はないと思う。ただ注目すべきなのは、国防長官の筆頭候補に挙がっているミシェル・フロノイ(オバマ政権時の国防次官)という人物だ。

彼女はヒラリー・クリントン氏の人脈で、海外に積極的に介入することも辞さないタイプの人だ。国防費の増額にも積極的と見られる。民主党は国防費を削減して社会保障に充てるという傾向が強いため、とくに左派からの理解が得られず、フロノイ氏の人事が遅れているのかが気になるところだ。

「内向き」のアメリカとどう向き合うか

――バイデン新政権になって日米関係にどのような変化が見込まれますか。

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アメリカはコロナで経済も傷ついているので、短期的に見た場合、防衛費に関して日本に一定程度の負担を求めてくることも考えられる。しかし、トランプ政権のように、日米の同盟関係が不公平だという認識は持っていないので、関係は安定化するのではないか。

中心的な課題は、米中のはざまで日本がどうバランスをとっていくかだろう。バイデン政権は中国に対して強硬だといっても、環境問題やパンデミックの対応では中国と協調せざるをえず、その分、中国に対して甘くなるという懸念はある。一方、アメリカからすると、日中が経済関係を深めていくことについては、中国が日米関係にくさびを打ち込もうとしているのではという懸念がある。そうした米中関係の中で、日本がどう舵を切っていくかは中期的に難しい課題だ。

また、アメリカでは今、サンダース的な左派とトランプ的な右派という左右のポピュリズムが力を増している。どちらも対外関与や自由貿易に関しては批判的で、反グローバル化で共通している。世代的にも、ミレニアル世代以下の若い層は、国際協調に関しては賛成だが、軍事介入や武力の行使には非常に慎重だ。つまり、全体的にアメリカでは、イデオロギー的にも世代的にも「内向き」の傾向があるので、長期的な日米関係を考えるうえでは注視しておく必要があるだろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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