(第32回)いつの間にかのスリム法・その10

山崎光夫

 同窓会の話--。
 還暦を過ぎて同期の卒業生が集まった。退職して時間に余裕ができたせいか集まりもよい。会は学生時代から面倒見のよい人物が司会者となった、よくある立食パーティ形式。
 まず、卒業後、この間に亡くなった人たちを偲び一分間の黙祷をささげる。その後、幹事による出身校の現況報告があって、乾杯に移る。テーブルの料理に手を伸ばし、酒も入って宴たけなわともなると、積もる話に花が咲いて賑やかとなり、広い会場も大きな声で話さないと聞き取れないほどに騒がしくなる。

 その会場を見回すと、皆いろいろな動きをしているが、会場での態度は大きく分けて、「座り組」「もてなし組」「話熱中組」の3組に特徴づけられる。
 「座り組」は会場の壁際に設けられた椅子に座って、飲んだり食べたりしながら隣りの人と話している。
 「もてなし組」はテーブルの料理を適当に盛っては運び、酒も注いでまわっている。さらに、“注文”を聞いては運んでいる。いわば、お世話係。
 「話熱中組」は料理や酒はそっちのけで、ひたすら話に夢中になっている。懐かしさに話が尽きないようだ。

 私が注目したのは、「座り組」と「もてなし組」の違いである。
 「座り組」は壁際の椅子にとにかく、座りっぱなしなのである。酒や料理は「もてなし組」に注文して運んでもらっている。
 自分は少しも動かない。この人たちの特徴は、外見では70歳くらいに見えるのである。おおむね肥満傾向にある。一方、「もてなし組」はスリム体形で50代に見えて若々しい。
 同期会だから年齢は同じはずなのに、外見上ではかなりの差が出ている。

 この違いは、「動き」の違いからきているようだ。「座り組」はとにかく動かない。自分でテーブルから料理を取るのも面倒がっている。
 家にいたらおそらく、もっと動かないだろうから、体重の増加や機能の低下は避けられない。会社を辞めたとたん、緊張感が取れ、家でもすることもなくただ漫然と過ごしてしまうタイプである。急に老け込むのも無理はない。
 こうした同年齢の会なので、健康度、老若度が判定できる。同期会ならではの特徴といえる。
 前回、家の中では小まめに動く、「家事運動」をすすめた。老け込まないためにも、自分で用事を見つけて動きたいものだ。勤め人をしていた現役時代、はつらつと、あるいは義務感にしろ、とにかく動いていた時代を思い出すのが得策だ。

 養生の大先輩・貝原益軒は『養生訓』の中で、
 「家に居て、時々わが体力の辛苦(しんく)せざる程の労働をなすべし」
と記している。益軒自身、使用人に頼まずみずから動いて家の用事をこなしていた。
 益軒は体にきつくない程度に手足を働かせる日常をすすめている。
 会社を定年退職するのは仕方がないが、何も、「健康維持生活」まで退職する必要はない。

 ところで私は同窓会の何組に入るのか。
 「座り組」「もてなし組」「話熱中組」のいずれでもない。しいていえば、出席者を観察する、「観察組」か。因果な稼業ではある。
山崎光夫(やまざき・みつお)
昭和22年福井市生まれ。
早稲田大学卒業。放送作家、雑誌記者を経て、小説家となる。昭和60年『安楽処方箋』で小説現代新人賞を受賞。特に医学・薬学関係分野に造詣が深く、この領域をテーマに作品を発表している。
主な著書として、『ジェンナーの遺言』『日本アレルギー倶楽部』『精神外科医』『ヒポクラテスの暗号』『菌株(ペニシリン)はよみがえる』『メディカル人事室』『東京検死官 』『逆転検死官』『サムライの国』『風雲の人 小説・大隈重信青春譜』『北里柴三郎 雷と呼ばれた男 』など多数。
エッセイ・ノンフィクションに『元気の達人』『病院が信じられなくなったとき読む本』『赤本の世界 民間療法のバイブル 』『日本の名薬 』『老いてますます楽し 貝原益軒の極意 』ほかがある。平成10年『藪の中の家--芥川自死の謎を解く 』で第17回新田次郎文学賞を受賞。「福井ふるさと大使」も務めている。
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