巨艦SC戦略に異変 突然の路線転換 イオン“決断”の理由

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巨艦SC戦略に異変 突然の路線転換 イオン“決断”の理由

国内の小売業で唯一、拡大戦略を突き進んできたイオンが路線修正を表明した。規模拡大から資産効率重視へ。その背景には株式市場からの厳しい評価があった。

2月28日、イオンは2008年度からの3カ年計画の基本方針を発表した。 

その内容を一言で言えば「拡大路線からの決別」。イオンはこれまで大型のショッピングセンター(SC)を年10店以上出店していたが、今後は「一気に出店速度を落とす」(豊島正明専務執行役)。08年度はこれまで出店準備を進めていたSCが多く、出店ペースは変わらないが、09年度以降は急ブレーキをかける。

ほかにも【1】事業の選択と集中、【2】保有不動産の流動化による資産のスリム化、【3】投資は営業キャッシュフロー内に抑制、などを掲げた。過去3年で1・2兆円だった総投資額は、08~10年度で8800億~9900億円に抑制する。一方で中国・アジア戦略を加速。同地域への投資を4倍ペースで増やし、10年度に190店体制を目指す。

なぜ、いま路線転換なのか。それは正確に言うと、「転換せざるをえなかった」というのが正しい。

裏切られた投資家 ダイエーが足かせ

イオンの背中を押したもの。それが株式市場だったことは間違いない。同社の株価は06年後半から一貫して下落基調にある。市場全体が軟調だったこともあるが、その下落幅は東証平均をはるかに下回る。

特にイオンは06年11~12月に2000億円規模の増資を実施している。公募価格は1株2704円。現在の株価1170円(3月5日終値)は、当時の半値以下の水準だ。

増資時は海外で20倍、国内を含めても10倍の応募がイオンに集中した。同社に対する国内外の投資家の期待は、それだけ大きかった。しかし、その後業績は低迷。08年2月期には米国タルボット、イオンクレジットなど子会社の低迷もあり、10期ぶりの営業減益が確実となった。

また、公募資金から462億円を投じ、グループに取り込んだダイエーも業績が低迷。イオンは07年3月の出資からわずか1年で、299億円の株式評価損の計上を余儀なくされた。投資家の期待は完全に裏切られた格好だ。

この状況下では、株式市場からの調達は当面難しい。一方、07年8月末の有利子負債は約1兆円。現預金を引いた実質有利子負債と株主資本の比率(ネット・デットエクイティレシオ)は1倍を下回っているものの、財務改善が課題であることに変わりはない。拡大を続けたくても、その元手を確保できない状況にある。
 

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