再びユーロ高に?市場に広がる警戒感 6月5日のECB理事会後は材料出尽くし?

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 5月29日、外為市場ではユーロ反転に対する警戒感が高まっている。3月撮影(2014年 ロイター/Tobias Schwarz)

[東京 29日 ロイター] - 外為市場ではユーロ反転に対する警戒感が高まっている。欧州中央銀行(ECB)による追加緩和の期待を織り込みながら、下げ足を速めてきたが、織り込みもかなり進んできた。打ち出される緩和策が利下げにとどまって市場の期待値を下回れば、材料出尽くし感が広がる可能性があるという。

ユーロ高を警戒するECB

ドラギECB総裁は、前回5月8日の理事会後の会見で、インフレ見通しに基づき妥当と判断されれば、ECBはユーロ圏の景気支援に向け、来月行動する用意があると言明。その後も、追加緩和の可能性をにじます発言を続け、市場では6月5日の理事会で追加緩和が決定されるのは、ほぼ確実とみている。

ECBのメルシュ専務理事が6月5日の理事会で複数の措置を打ち出す可能性があると発言すると、ユーロ/ドルは29日(訂正)、追加緩和への期待感の高まりから一時、2月以来の安値となる1.3586ドルまで下落した。

ユーロ圏では、物価上昇率が鈍化する「ディスインフレ」傾向で実質金利が高まったほか、経常収支も黒字化。景気回復を損ないかねないユーロ高に対し、中銀関係者の警戒感が高まっているとマーケットは見越し、ユーロ売りが断続的に出ている。

織り込まれた期待感

ただ、ECBが打ち出すと見られる追加緩和策は、市場でかなり織り込まれてきた。ECBの誘導目標となるEONIA(ユーロ圏無担保翌日物平均金利)の1カ月物は5月8日の0.226%が29日は0.133%にまで低下。政策金利の現行0.25%から0.1%台への引き下げはほぼ「織り込み済み」(邦銀)だという。

政策金利の引き下げ以外にも、金融機関がECBに預け入れる中銀預金金利の現行ゼロからマイナス0.1%への引き下げも有力視される。証券市場プログラム(SMP)の不胎化停止や、長期流動性供給オペ(LTRO)の第3弾、無制限の固定金利資金供給の期限を来年12月まで延長することも、可能性が指摘されている。

ただ、ユーロ安が進む中で、こうした政策ではサプライズ感を出すのは難しくなっている。

一方、日本や米国のように国債買い入れを伴う量的緩和が決定されれば「サプライズ」となって、大幅なユーロ安になるとみられている。

だが、どの国の国債をどういう割合で購入するべきか、ユーロ圏内部の調整が難航するとみれており、今回は盛り込まれず、将来の政策カードとして温存するとの見方が市場では有力だ。

出尽くし感でユーロ買いも

ユーロ/ドル相場は、5月だけで約300ベーシスポイント下落した。市場では「これだけ期待が高まってしまうと、ただ利下げだけということだと、おそらく逆効果だろう」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)との観測が広がっている。

JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジストは「シンプルに、国債買い入れタイプの量的緩和と、それ以外の策とで分けて考えていい」としたうえで、利下げやマイナス金利といった、量的緩和以外の策は「大部分が織り込まれている」(棚瀬氏)と指摘している。 

(平田紀之 編集:田巻一彦)

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