NTTが「GAFA対抗」なりえる為に欠かせない条件 ドコモ完全子会社化の先に見える展望と課題

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GAFAへの対抗を考えるならば、新たなプラットフォーム、新たなエコシステムの構築が必須です。ここではスマートシティ以外の選択肢を検討してみたいと思います。図はIT・通信業界の産業構造を示したものです。

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(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

上流から下流へと半導体メーカー、通信機器メーカー、通信キャリア、携帯メーカー、サービス・プロバイダーが階層をなし、部品メーカーとライセンスプロバイダーがそれぞれに部品とライセンスを提供しています。

個別に補足しておくと、通信機器メーカーはエリクソン、ノキア、ファーウェイなど。コアネットワーク設備、アクセスネットワーク設備、ユーザー端末といった通信インフラ機器を扱う会社です。サービス・プロバイダーはまさしくGAFAを指しています。アマゾンならECサイト、フェイスブックならSNS、グーグルは検索とOS、アップルはアップストアと、消費者との接点となるサービスを提供しています。

BtoBよりBtoCのほうに主戦場がある

ここで重要なのは、現在のデジタル覇権をめぐる戦いは、サービス・プロバイダーのレベルで行われているということです。彼らは直接的に消費者との接点を持っています。

もちろん、物理的にみればスマホを消費者に提供しているのはメーカーであり、通信キャリアが通信サービスを消費者に提供しているのですが、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供し、「親密な関係性」を消費者との間に築いているプレイヤーは、サービス・プロバイダーに限られています。言い方を変えれば、BtoBよりもBtoCのほうに主戦場があるのです。

残念ながら、サービス・プロバイダーとしてグローバルに展開し、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できている企業は、日本国内には見当たりません。国内では圧倒的ともい言える顧客接点を持つ楽天やヤフー、LINEにしても、その影響力はグローバル規模には届いていません。

なお、業界構造の「上から下まで」をカバーする特異なポジションを築いている企業にファーウェイがあります。ファーウェイはもともと通信機器メーカーとして力をつけてきた企業であり、現在も5Gの通信機器メーカーとしてはトップ、ライセンスプロバイダーとしても強力な地位を築いています。

しかし現在は消費者向けの端末メーカーでもあり、アプリケーションストアや電子ウォレットも提供するなど、サービス・プロバイダーの事業領域にも積極的に展開しています。

GAFAへの対抗を考えるなら、こうした業界構造を前提とする必要があります。GAFAが握る覇権とはサービス・プロバイダーの覇権のこと。そしてサービス・プロバイダーの覇権とは、スマホ上で顧客と親密な関係を築けるか、スマホ上で優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できるかにかかっています。

ひるがえって、NTTが実現しようとしているスマートシティは、そのようなものになりうるでしょうか。NTTが語る「スマートシティプラットフォーム」は消費者が直接触れることのないインフラ領域に属しているように聞こえますが、そのサービスを提供するには「スマホ上で消費者とつながる」ことが絶対条件のはず。ところが、これまでのNTTは極めて「BtoB」寄りの会社でした。

このカスタマーエクスペリエンス重視の時代になっても、「B2B2X」として、「連携企業を介して」個人や法人などエンドユーザー向けサービスを提供することをうたうのみで、消費者と正対しようとはしません。そこにはBtoBの会社であることの誇りも見え隠れしています。

しかし前述のとおり、プラットフォームの覇権をめぐる戦いは、顧客接点をどれだけ持てるかにかかっています。BtoB事業者としてスマートシティのインフラを提供するのみにとどまるなら、GAFAとの戦いに勝算はありません。

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