ディズニー「名作アニメの差別描写」に悩む理由 ついに「ディズニーランド」にまで影響が出た

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OTT世界配信サービスと言えば、一人勝ちを続けるネットフリックスだが、そのなかでも韓国ドラマは、いまや配信後世界中でヒットを打ち出す最強コンテンツの1つとなっている。

一方で、韓国ドラマのそれまでの当たり前が、ネットフリックスを通じて世界配信されることによって疑問視される例も登場した。

今年4月から6月まで、SBSにて放送されていた『ザ・キング:永遠の君主』は、同時進行でネットフリックスでも配信されていた。

『相続者たち』『花より男子』などに主演したイケメン韓流スター、イ・ミンホの除隊後初のドラマ主演作として放送前から注目を集めていた『ザ・キング』だが、それだけに俗に「プリバイ」と呼ばれる出来上がる前から買い付ける方法で配信が契約されていた。ネットフリックスは、全16話完成前から配信権を1話あたり20〜25億ウォン、全16話で320〜350億ウォンを支払ったという。

この買い付け金と韓国国内放送で、製作費は全て回収済みと言われていたが、一報でこのドラマでは、PPLと呼ばれるドラマ内の間接広告が多用され批判の対象となった。

PPLとは、お金をもらってスポンサー商品を劇内で登場させることで、『ザ・キング』では特定のチキン屋さんやカフェが頻繁に登場し、商品紹介とも取れるひと言が台詞に付け加えられていた。

また、ドラマのキャラクターも典型的な「白馬に乗った王子様」といったイメージで、表現が古いと不評だった。結果視聴率も、開始当時からどんどん下がっていき8%ほどで終了している。

今、多様性に配慮した作品でも…

作品を見る世間の目は時代によって変わっていく。制作時にはOKだった表現も、今の時代では非常識に見えてしまうこともあるだろう。過去の作品を改めて現代の目で見直し、考えるうえでOTT配信はいいきっかけとなっている。

一方で、今回のディズニーの件を見ていると、特定の人種を馬鹿にしたギャグ部分は問題外だが、そもそも当時はそれまで多様な人種を作品中に登場させることすらなかったのではないだろうか? もしかしたら、それはステレオタイプでありながら、当時は多様性を取り入れようとした進歩的な表現だったのかもしれない。

例えば、今LGBTQ+のキャラクターが登場するドラマや映画は多い。しかし、大げさな喋り方や毒舌な性格、派手な衣装、女装男装など、現代のわれわれはセクシャルマイノリティーの人々へ、ステレオタイプなイメージを作り出してしまっているのかもしれない。

数年後、多様性が今よりももっと当たり前になった世界では、それは差別表現だと言われる可能性も十分にあるのだ。

ウォリックあずみ
映画配給コーディネーター。20歳で渡韓、2002年韓国ソウル芸術大学映画学科に入学。2005年から韓国の映画会社入社、2008年より映画バイヤーになる。2016年に帰国、2017年よりアメリカ・ワシントンDC在住。
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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