「新しい仕事を創り出す仕事」のススメ ソーラーフロンティア社長 玉井裕人(上)

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 東日本大震災と原発事故の後、太陽光発電にますます注目が集まっている。その中でもCIS薄膜太陽電池は、日本が世界に誇れる技術として期待が寄せられている。このCISを製造・販売するソーラーフロンティアの玉井裕人社長は、親会社の昭和シェル石油で長年、電力事業に携わってきた。石油会社で電力事業に挑戦してきた原点とは?

初任地は製油現場

三宅:玉井さんは1980年に昭和石油(現・昭和シェル石油)に入社しました。この会社を選んだ理由、そして最初に与えられた仕事のところから教えてもらえますか。

玉井:大学では機械工学科で熱力学を研究していたので、エネルギー関係の会社に興味を持っていました。初任地は川崎市の川崎製油所でした。現場で交代勤務をして、装置の運転、設備の点検と修繕をやらせてもらいました。約400人の従業員のうち、大卒は20人ほど。職人気質の残る職場でした。そして2年目からは製油所の運転を指導する部署に移り、よりよいものを、より少ないエネルギーで作るにはどうしたらいいかを計算して、こういう運転をすればガソリンがもっととれますよ、省エネできますよと、現場に提案する仕事に従事しました。

三宅:現場の職人さんたちをインストラクトする立場ですね。

玉井:そうです。ベテランの人たちですから、「できるわけがないだろう」とか、「やれるものならやってみろ」と言われて、議論が絶えませんでした。それでも時間が経つにつれて、わかってくれるようになり、話を聞いてもらえるようになりました。今思うと、この過程が僕の原点だったと思います。

三宅:玉井さんは昔から、人に納得してもらうロジックを作るのが得意だったのでしょうか。

玉井:いえ、そんなことはありません。当時の上司に随分鍛えられました。10歳ぐらい年上の係長で、仕事にはうるさい人でした。現場に行く前に、こうしたらどうするんだ、ああしたらどうするんだ、それはなぜだと、どんどん質問してくるのです。計算したらこうでした、という答えでは許してくれなくて、「なぜそうするのかを、一言で言い当てろ」と言われました。

三宅:突き詰めろということですか?

玉井:ええ。たとえば、配管に倍の量の油を流したいとき、圧力が途中で低くなると流れ着きませんから、圧力損失を細かく計算します。でも係長は、「おまえ現場を見に行ったか? こことここの圧力を測ってこい」と言うのです。それで、圧力は流速の2乗に比例するから大体こうだろうというように、流れるか流れないかをパッと感覚的に判断する。そうでなくては現場の人を説得できないと言うのですね。そこから先の細かい計算はプロにやってもらえばいいわけです。

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