第6回 研究能力を使いこなす企業は強い?! 後編

大学との連携は企業にもメリットがある

今のところ、ビジネスの研究やビジネスモデルの開発に対してはここに書かれていることは全く当てはまらないとする根拠はありません。知識や情報を交換し新たな知恵を生み出すという観点に立てば、技術開発もビジネスの研究やビジネスモデルの開発も産学の関係は全く同じなのではないか、と考える方がむしろ自然であるように思います。

 第5回に取り上げたモーリーとティースの論文の引用にある、「社内の基礎研究テーマを選択する」を「事業テーマを選択する」あるいは「活動方針を選択する」と読み替えれば、そのままビジネスの研究にも当てはまるのではないでしょうか。すなわち自社でビジネスの研究をしていないと、大学をうまく使えないし、大学などで生まれた基礎的(=学術的)知識もうまく使えないということです。

 逆に言えば、大学との共同研究成果を効率的に利用できれば、事業の将来方向を決めたり資源投入のポイントを決めたりすることがより上手にできる可能性がある、ということです。つまり、ビジネスの研究においても、大学との連携は企業にとってメリットがあるはずなのです。

 しかし、実際に交流する場合を考えると、技術開発とビジネスでは、いろいろと事情が異なります。ビジネスを研究する大学の研究者にとっては、企業活動そのものが研究対象ですし、実験室で実験できる研究対象ではありませんから、その実情・実体、新鮮な情報に触れることがどれほど重要であるのかは言うまでもありません。

 とはいえ、生の企業情報には多くの企業秘密が含まれているでしょうから、それをそのまま大学の研究者に開示するのは、世界中どの企業でも抵抗のあるところです。このリスクを考慮に入れると、そう簡単に企業側にもメリットがある、とは言えなくなってくるのです。

次ページ企業と大学を繋ぐ人
関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
あのころ銀行は<br>無茶苦茶だった

『住友銀行秘史』の著者で元・住銀取締役の國重惇史、元イトマン顧問弁護士の河合弘之、元長銀取締役の箭内昇。平成の金融バブルの最中に起きたイトマン事件の真相と教訓を語る。