J-REITの信用力は二極化が鮮明、資金調達環境は回復の兆し《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 過去2年間、信用市場の混乱から発行条件が悪化し、各投資法人とも投資法人債の発行を見合わせる状況が続いた。09年に償還期限を迎えた投資法人債の規模は690億円だったが、投資法人債の新規発行によるリファイナンスはなく、金融機関からの借り入れ、または物件売却や手元資金による返済で償還している。

10年に入ると、投資法人債市場の回復が見られ、1月に日本ビルファンドが100億円の投資法人債(期間5年)を発行したほか、2月にはオリックス不動産投資法人も上場以来初となる投資法人債の発行(総額120億円、期間3年)を発表した。短期投資法人債についても、09年12月に野村オフィスファンドが40億円の発行を再開した。

図2に示すように、10年には投資法人債の償還がピーク(総額1548億円、短期投資法人債を含む)を迎える。日本ビルファンドが投資法人債の発行を再開し、金融機関からの借り入れスプレッドと比較して、ある程度良好な水準であったことから、信用力の高いJ-REITでは今後、既発債の償還資金の調達手段として投資法人債の発行を検討していくと考えている。

一方、相対的に信用力の低いJ-REITのリファイナンス資金の手当ての方法を引き続き注目している。すでに物件売却によって投資法人債などの負債を返済してきたJ-REITや不動産市場の低迷によってポートフォリオの含み損(期末算定価格と簿価の差額)が拡大しているJ-REITにとって、さらに物件を売却して返済資金を確保するという選択はポートフォリオの質の低下や分配金水準の一層の下落につながる。

※写真と本文は関係ありません

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