LCCも頭を抱える、成田空港の駐車場事情 羽田より不便なのに、羽田より割高

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付け加えると、24時間までは2060円であるが、たとえば24時間30分の駐車の場合には2日分の4120円が必要となる。4000円台前半なら、空港周辺のホテルに前泊して、駐車場無料サービスを適用するのと変わらなくなってしまう。これが、羽田空港の場合、1日料金と時間制の併用となっており、24時間30分の駐車の場合、1500円+30分150円=1650円となる。

成田発着のLCCを利用する人の大半は、航空運賃の安さを理由に選んでいる。そのような状況の中、1日最大1500円に設定している羽田より高い駐車料金を取られるというのは、納得のいかないところだろう。空港周辺にある民間駐車場を使えば、1日500~1000円程度で駐車できるが、空港へのアクセスには送迎バスに乗る必要がある。海外旅行などで長期間預ける場合、割安な民間駐車場はありがたい存在だが、国内線で数日預けるだけであれば、この一手間を不便に感じる人も少なくないはずだ。

利用者目線での対策が必要

LCCにしてみても、全国6位の人口(約620万人)の千葉県民の取り込みを期待していたが、客足は想定していたほど伸びていない。鉄道やバスのアクセスが不便ではあるものの、県内は高速道路が整備され、自家用車を保有する家庭も多い。駐車料金が安くなれば、航空運賃の安いLCCを組み合わせた国内旅行の増加も十分に見込める。特に搭乗率が伸び悩んでいる朝6時台・7時台の出発便の搭乗率アップも期待できる。

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成田の利用価値を高めるためにも、駐車料金の見直しは必須だ(撮影:尾形文繁)

現状、ターミナルから徒歩で5分ほど離れた「第3駐車場」(普通車120台、第2ターミナルに近接)と「第5駐車場」(普通車590台、第1ターミナルに近接)に限り、1日1530円で駐車できるが、LCCのリピーターを中心に満車状態が続いている。

駐車場を運営する成田空港会社が、国内線LCCを本気で成田に定着させたいと考えているのであれば、国内線の利用者限定で1日1000円程度の駐車料金を導入できないものだろうか。1000円になれば、千葉県内はもちろん、東京や神奈川、埼玉、茨城などからも利用者が増えるはずだ。

それが難しければ、千葉県がバックアップする方法もあるだろう。同県は、東京湾アクアラインの通行料金をETC車に限り普通車800円にする政策を実施したことで、アクアラインを使って千葉県を訪れる観光客が増加し、県内経済に大きな恩恵があった。同様に成田空港の駐車場においても、空港活性化の観点からサポートがあってもいいのではないか。

来年には第2ターミナルから歩いて10分ほどの場所にLCC専用ターミナルがオープンする予定で、成田空港の国内線LCCのあり方について考え直す時期が近づいている。ここで駐車場をはじめとした利便性向上へ何らかの策を講じなければ、LCCに対するこれまでの取り組みも水泡に帰してしまう。そうならないためにも、利用者目線での対策を期待したい。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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