ニッポン野球界への「怒り」と「希望」 日本の野球に未来はあるのか?

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MLBは戦力均衡のため、全国放送のテレビ放映権など、ある部分の収益を全30球団で分配している(リンクの「収益分配制度」を参照)。

ある意味、この仕組みは「共産主義的」だ。日本ハム球団代表の島田利正はニューヨーク・ヤンキースの関係者に、「企業努力で売り上げを伸ばしているのに、分配されては頭に来ませんか?」と聞いたことがあるという。当然、「頭に来る」という答えが返ってきた。論理として、企業努力を怠る球団が出てきてもおかしくはない。

ゆえに、「資本主義的」なNPBのあり方が間違っていると言い切ることはできないが、一方で、ビジネス的創造力の限界という課題を抱えている。既存のメンバーがいくら話し合っても、新しい発想や手法は生まれづらい。安倍政権が6月に打ち出す成長戦略のひとつに「プロ野球団の増設」を盛り込むことが話題になっているが、政治主導でなければ、こうした発想が真剣に議論されることは難しかった。

侍ジャパン株式会社の意義

ただし、それには仕方のない側面もある。NPBは一般社団法人だからだ。12球団が資金を出し合い、プロ野球をうまく回すためにNPBは存在している。野球人気向上や、マネタイズの役割は求められてこなかった。それは各球団がやるべきこと、という発想なのだ。

しかし、ひとつの球団にできることは限られている。プロ野球12球団、もっと言えばアマチュア球界と手を取り合えば、可能性は多いに膨らむのではないか。

そういった背景を踏まえ、現状を打破する可能性を持つのが侍ジャパンだ。何よりさまざまなステークホルダーにとって、オールジャパンとなる大義名分が侍ジャパンにはある。

その点で意義深い発表が、4月25日になされた。侍ジャパンが株式会社設立を目指すことに決めた、というものだ。なぜ、株式会社化は意義深いのか。報道では一言で「収益拡大」とされているが、理解するにはもっと深く掘り下げる必要がある。

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