「老後2000万円」問題打開に必要な所得税の焦点 非課税限度額、退職金税制の改正が求められる

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他方、余裕がある人には私的年金や非課税貯蓄、退職金などがある。これらの手取り額がいくらになるかは、所得税が関わってくる。

私的年金や非課税貯蓄、退職金には、所得税負担が銀行の普通預金よりも軽くなる仕組みがある。普通預金は、預金の原資となる所得に所得税がかかり、預金の利息に対しても所得税が課される。つまり、所得税が2度、課されている。

しかし、企業年金や個人年金(iDeCoなど)といった私的年金は掛金を拠出する段階で所得税は非課税となる拠出限度額が設けられ、拠出限度額の範囲内であれば掛金分だけ所得税が課されない仕組みとなっている。ただし、年金給付を受け取る段階で所得税が課される。

バラバラな制度と非課税限度額

他方、非課税貯蓄(NISA)は、積み立てる段階では非課税の優遇はない。稼いだ所得に所得税がかかる点では、銀行の普通預金と同じである。しかし、非課税貯蓄を運用後に引き出す段階では、要件を満たせば運用分も含めて所得税が課されない。ただし、NISAには非課税で投資できる限度額が定められており、それを超えて非課税で運用できない。

どちらの仕組みを使えば有利かは単純ではないが、どちらの制度でも非課税にできる額が多ければ、それだけ有利になる。企業年金や個人年金は厚生労働省が所管し、NISAは金融庁が所管している。そして、非課税限度額をいくらにするかは所得税制を所管している財務省が企画する。今のところ、非課税限度額は制度ごとに定められている。

老後に備えたいが、制度には詳しくない人からすれば、制度が林立し、非課税限度額も別々となると、複雑すぎて尻込みしてしまうだろう。とはいえ、私的年金も非課税貯蓄もそれぞれ異なった性格を持っており、制度を統一するわけにはいかない。

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