グローバル時代に対応できない日本の人事 経営戦略と人事戦略が一致しないと、生き残れない

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ポートフォリオとパフォーマンスで考える

──人事組織は縦割りで、育成は育成、採用は採用と別々にやっていて、全体を見渡して現状分析するのが難しい状態です。

われわれは人事管理をポートフォリオとパフォーマンスの2つから考える。ポートフォリオとは戦力配置だ。これから1年の戦いのために、この拠点には将校を何人、兵隊を何人、戦車を何台配置すれはいいかを考える。そして、いざ戦いが始めれば、兵士のモチベーションや健康状態を高いレベルに保つためのパフォーマンスマネジメントが必要となる。

人事管理もこれと同じだ。ところが、日本の人事管理ではポートフォリオに関する議論が少なすぎる。逆に多すぎるのがパフォーマンスに関する議論──、特にモチベーションに関する議論だ。いかにモチベーションを上げるかという議論はもちろん重要だが、そもそも自社の戦力は足りているのか、足りていないとすれば人数なのか、個々の能力なのかといったことに関心が向けられることは少ない。

人事組織をこの2つに編成すればいいと思う。ポートフォリオを担当する組織は採用、教育、配置、退職──要するに戦力を整え、配置をするのが仕事だ。

一方、パフォーマンスを担当する組織は評価、給与、福利厚生など従業員のモチベーションアップや健康管理を担う。ポートフォリオを担当する組織は経営計画に従って戦力を整え、パフォーマンスを担当する組織は経営目標達成のためのパフォーマンスマネジメントをする。こうすれば、全体を見渡しての現状分析もしやすくなるだろうし、スピーディな対応もしやすくなるはずだ。

──日本ではポートフォリオに関する議論が少なすぎるというお話が出ましたが、それによって、どのようなことが起こっているのでしょうか。

日本の労働市場の中で大企業、外資系企業の占める割合は2割程度だ。にもかかわらず、大卒者は大企業とその関連会社、あるいは外資系にしか行かない。その結果、中堅中小やベンチャーはもっぱら中途採用に頼ることになる。どんなによい技術を持っていて、どんなによい会社でも、中堅中小、ベンチャーは人材難だ。ポートフォリオについて、もっと真剣に考えるようになれば、人材の流動化が今以上に進むだろう。

リストラというとイメージが悪いが、要するに大企業で潜在的に優秀だと思われていた人が活躍の場を失って外に出るということだ。活躍の場はその企業になくなったというだけで、中堅中小やベンチャーの中にいくらでもある。

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