敏腕TVディレクターが「相撲映画」に挑んだ理由 音と映像にこだわったドキュメンタリーが誕生

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でも、みんなが撮っていないからこそ逆に面白いなと思った。だからここは意地でも撮ろうと決めたわけです。さらに琴剣さんに、境川部屋とは違った個性のある部屋はないかなと聞いたら髙田川部屋を紹介してくれた。

髙田川親方の話がものすごく面白くて、ずっと名言を言うんですよ。さらに竜電関はいわゆるお相撲さんのイメージじゃなくて。ものすごく普通に笑うし、明るい。ここはいいなと思って髙田川部屋にしたわけです。

武隈親方(元大関豪栄道)にも密着 ©2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会 

――音響も主にハリウッド映画などで使われているドルビー・アトモスを採用しています。機材も相当いいものを使っているのではないでしょうか。

機材のことはよくわからないですけど、(ミシュランで三つ星を獲得している)すきやばし次郎というすし屋を扱った『二郎は鮨の夢を見る』(デヴィッド・ゲルブ監督によるアメリカ映画)というドキュメンタリー映画を見たときに、お寿司を芸術品のように、すごくきれいに撮っていたんです。これはすごくいいなと思って、今回の映画ではお相撲さんをそれと同様にきれいに撮りたいなと意識しました。

カメラの技術チームのトップに義理の弟がいるのですが、彼にこんなふうに撮りたいんだと相談したら、「だったらこうした機材がいいよ。ただお金はかかるよ」と。それでドルビー・アトモスを採用したのですが、音を録るのもテレビでは見たことないような特殊な録り方で、もちろんその費用も高かった(笑)。

いい音にこだわった

――取組中の音はBGMもなく、力士がぶつかる音や息づかい、館内の歓声などを、しっかりと聞かせたいという意図を感じました。

そこはやはりいい音にはこだわりたかった。海外の人にもお相撲のことを知ってもらいたかったから、両国国技館に行った事がない人にもそこの取り組みを体感できるようにしたかったんです。それができるのがドルビー・アトモスだったというのが採用した理由としてはあります。

――取組の場面でBGMを使わなかったことに抵抗はなかったでしょうか。テレビマンとして、BGMなどで映像を盛り上げたいという思いは湧かなかったのでしょうか。

僕はそれをやらないから視聴率が取れたんだと思います。笑いを足すとか音楽を足すということは、必要な時には足しても過剰にはやらない。

バラエティーってドキュメンタリーに近いと思うんです。「マツコの知らない世界」はバラエティーなんですけど、マツコさんとゲストのドキュメンタリーでもあると思っています。自分の好きなものをプレゼンしたい人がいて、初めて会ったマツコさんがそれにどう心が動いてくのか、というドキュメンタリーなんですよ。

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