「ヴィレヴァン」を映画の題材に選んだ深い理由 監督と脚本家が語る「企業もの作品」の可能性

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後藤監督:矛盾の塊ですよね(笑)。

いながき:ただ大前提として、ヴィレッジヴァンガードのことが好きなんですよ。その大前提があるから、そういう議論ができるんだと思います。だからこそ「好きなこととお金は同居させられるのか」という意外と根本的な問いが出てくる。

後藤監督:元スタッフたちが言っていたのは、しばらくバイトで働いていると、社員にならないかと聞かれる。それに対してはものすごい葛藤があったらしい。ヴィレヴァンは最高だけど、ここにずっといるわけにはいかないんだと。

いながき:だからずっとアルバイトを選ぶ人もいるんですよね。社員の打診をされても、「いや、そういうことじゃないんだ」と。だけど出ていかない(笑)。アルバイトでずっと残る人も結構いたんですよ。

劇中で使われるポートレートは、ヴィレッジヴァンガードの本店をバックに撮影 ©2020 メ〜テレ

――ヴィレッジヴァンガードに交渉に行った時のやりとりはどうだったんですか。

後藤監督:「やってくれるんですか! いいっすよ」みたい感じでしたね。

――心配する声などはなかったのでしょうか。

後藤監督:もちろん自由な人たちがいる一方で、日本一の店舗数を誇る会社組織をキープするために「夢ばかり語っているわけにはいかないよ」という人たちもいる。そうした方たちからは、「どういう内容なんですか」「関係各所に問題がないように作れるんですか」といった懸念はあったようです。今は何も言ってこなくなりましたけど(笑)。相当、自由にやらせていただいたので、障害はほとんどなかったですね。

映画化はヴィレバンの懐の深さが大きい

――結構、ヴィレヴァンで働く人たちの日常を自虐的にというか、赤裸々に描いている部分も多くて、よくヴィレヴァンは許してくれたなと思いましたが。

いながき:確かに他の企業とかだとすごく嫌がられそうですよね。しかも「事実に基づいたフィクションです」とか言っているし。

後藤監督:絶対駄目でしょ(笑)。

いながき:確かに冷静に考えてみると、よくやらせてくれたなと思います。それがヴィレッジヴァンガードの懐の深さというか。いいところですね(笑)。

――とんでもないことを描いているんですが、イメージダウンじゃない。根底にヴィレヴァンへの愛があるからだと思うのですが。

後藤監督:仕事柄、彼らはほかのいろんな作品を知っていますから、「このフィクションが事実だと思われたら困る」といったナンセンスなことは言わないです。関係各所の人が見て、何か言われたら嫌だなということはありますけど、自分たちがどう見られるかということよりも、作品には好きにやってもらいたいという作品愛がある。

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