「消費者参加型企画」を成功させるには? なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか(3)

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ゲーミフィケーションは、ゲームに参加してくれる消費者にしか有効ではありません。ゲームに関心を持ってくれる消費者ならばよいですが、ポイントは別にいらない、バッジには興味がない、という消費者に、いくら「おめでとうございます! あなたはxxポイントを獲得しました。がんばってもっとポイントを集めましょう」と誘っても、消費者が乗ってこないのは当然です。そんな短絡的な報酬よりも、他者からの「ありがとう」とか「役に立った」といった一言のほうが、よほどクチコミの駆動要因として有効です。

消費者のコストを下げ、ベネフィットを上げよ

消費者はコストとベネフィットを天秤にかけて行動します。ということは、ソーシャルメディアに参加してもらい、消費者のエンゲージメントを高めるためには、ベネフィットを上げることとコストを下げることがポイントとなってきます。

ベネフィットを上げることについては、機能を増やす、向上させるといったことに注力することによって企業は努力をするでしょう。しかし、こうした機能的ベネフィットは他社から模倣されやすいという欠点があります。比較的模倣されにくい情緒的ベネフィット、自己表現的ベネフィット、社会的ベネフィットを向上させることが重要でしょう。

また、消費者のコストを下げることは、実は難しいことです。プロダクト・デザイナーの秋田 道夫氏は、「機能を増やすには技術がいるが、機能を減らすには哲学がいる」という名言を残しています。おっしゃるとおりですね。何かを削るのは勇気のいることです。

企業はよいものを作ろうとして製品のスペックを上げていくのでしょうが、実はオーバースペックは消費者の時間的コスト、心理的コストを増大させるのです。不安だからといって「全部入り」にするのではなく、むしろ機能をしぼったほうが消費者のエンゲージメントを高めることができるでしょう。

山本 晶 慶應義塾大学ビジネス・スクール 准教授

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やまもと ひかる

 やまもと ひかる 慶應義塾大学ビジネス・スクール准教授。東京都出身。11歳から15歳まで米国ニューヨークで過ごす。
外資系広告代理店勤務を経て、2001年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2004年同大学院博士課程修了。博士(経済学)。成蹊大学経済学部准教授を経て、2014年4月より現職。専門はマーケティングで、主に対人影響の研究に従事。日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会(幹事)、日本商業学会、INFORMS、AAAI、AMAの各会員。著書に『コア・テキスト マーケティング』(新世社)、「Webマーケティング」『人工知能学会誌』、『知覚認知率がクチコミ受信意向と購買に与える影響(共著)』などがある。

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