未だ消えない「大連立構想」、福田、小沢両氏のワンチャンス

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未だ消えない「大連立構想」、福田、小沢両氏のワンチャンス

いまも大連立の話は消えていないと見る人が多い。
 3月が期限の日銀総裁人事や、先送りとなった暫定税率問題をめぐって、与野党協議が取り沙汰されると、必ず「底流に大連立の思惑」という観測が浮上する。民主党はとりあえず大連立否定の方針だが、福田首相と小沢代表は、いまも大連立論者と見て間違いない。だが、実際は両者は同床異夢だ。

福田首相はねじれの克服、政権基盤と政策実行体制の強化、支持率回復、政権維持が目当てだ。一方の小沢代表は一言で言えば「民主党政権樹立の予行演習としての政権参加」が狙いである。
 昨秋の党首会談後の記者会見でも、民主党の政策の実現、力量不足と政権担当能力欠如の克服を政権参加の理由に挙げた。93~94年の細川、羽田政権の躓きという苦い思い出が消えないのだろう。次の総選挙の前に一度、政権に参加して政権担当の訓練を積み、解散と同時に連立を解消して総選挙に臨むというシナリオである。

その選択肢の是非、功罪は議論があるが、いまも小沢代表がその気なら、3~4月にもう一度、大連立話が再燃する可能性がある。だが、チャンスは3~4月の1回きりだろう。小沢代表は「総選挙は必ず年内」と公言しているが、その見方は正しい。衆議院議員の任期満了は来年9月で、自民党には満了選挙説を唱える声もあるが、来年は消費税増税法案を取り上げなければならなくなる可能性が高い。自民党が増税の年の選挙を容認するとは思えないから、総選挙は今年中の公算が大きい。だとすると、「予行演習の政権参加」は最低、半年の時間が必要だから、逆算すれば、大連立実現は今春がぎりぎりということになる。
 福田首相と小沢代表は「最後のワンチャンス」に再挑戦するのかどうか。

塩田潮

塩田潮(しおた・うしお)

ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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