日本の金融システムは今の時代に合っていない--大塚耕平・内閣府副大臣(金融担当)

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--郵政などの公的金融の肥大化や公的保証の存在が非効率性を温存してきたのではないでしょうか。

公的関与は大きすぎないほうがいいということは概念としては普遍的に正しい。もっとも、公益性と効率性はトレードオフのようにとらえられているが、それはちょっと違うと思う。公的関与があるものは非効率でいいということではない。最近は、公益資本主義という言葉が語られ始めている。水と油を混ぜ合わせるような話だが、どう融合させるかが大切だ。郵政の見直し議論の中で、公益性と効率性の双方を見据えていることは、この時期の金融システムが当面、目指すべき方向としては合理的なことだと考えている。

--世界的にソブリンリスクに関心が集まる中、日本の財政、国債に厳しい見方がなされています。

実際に、厳しい局面に来ており、真正面から取り組まなくてはいけない。政治や行政が予算の無駄な使い方をやめなければならないが、その背景には経済界や産業界の姿勢もある。財源を使わなくてもできる経済政策はいっぱいある。ところが、「成長戦略を出せ」と主張する財界自身が規制改革に対し常に“総論賛成各論反対”の姿勢だ。そのこと自体が日本の成長を制約している。一例を挙げれば、ゆうちょの預金限度額引き上げに反対の農林系統金融機関自体が、半世紀余りも独占禁止法の適用除外にある。自分たちだけが例外、では説得力がない。政官財が総懺悔(ざんげ)をしないと、この難局は乗り切れない。

規制改革への取り組み強化に当たり、各省庁幹部に対して「日本航空の顛末は霞が関にとって他人事ではない」と伝えてある。日本株式会社が破綻することになれば、官僚の年金は3分の1になりかねないということだ。財界も官界も、自分たちだけは安泰だと思っているかぎり、この国はよい方向には行かない。どの規制を改革したら、企業や産業が活性化するかはわかっていると思う。規制改革の役割は極めて重要だ。

※ボルカー・ルール/ボルカー元FRB議長の提案による金融規制案。銀行や銀行を含むグループ企業がヘッジファンドやプライベートエクイティ、自己勘定業務に投資・所有・運営をさせない、金融セクターが合併する際に負債のシェアに一定の制限を設ける、とする。

※マクロプルーデンス政策/個別の金融機関のリスクを監視し、健全性を図るミクロプルーデンス政策に対して、金融システム全体のリスクを把握し安定を図る政策。

(聞き手:大崎明子 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年3月6日号)

おおつか・こうへい
1959年10月名古屋市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院博士課程修了(学術博士)。日本銀行を経て2001年7月参議院議員初当選。09年9月鳩山由紀夫内閣の内閣府副大臣(担当は金融、郵政改革、地域主権推進、拉致問題、経済財政、規制改革等)。

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