シナリオ再構築迫られ、1ドル99円台視野

ドル円相場に底割れのリスク

 5月21日、ドル/円の底割れリスクが強まってきた。昨年2月撮影(2014年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 21日 ロイター] - ドル/円の底割れリスクが強まってきた。ドル安基調が続くなか、黒田東彦日銀総裁が会見で追加緩和に慎重な姿勢を見せ続けたことで節目の101円を下抜け、年初来安値に接近した。

これまで日米金融政策の方向性の違いからドル高/円安方向に動くとの見方が多かったが、投資家はシナリオの再構築を迫られている。100円割れを指摘する声も増えてきた。

黒田日銀総裁の会見がきっかけ

午後3時半、黒田日銀総裁の会見が始まると、ドル/円はオプション関連のオーダーや実需の買いが並ぶとされる101.00円を割り込み、100.80円まで下落。2月4日につけた年初来安値100.75円に迫った。

「アベノミクス相場」開始以来の支持線となっていた200日移動平均線を明確に下回り、テクニカル上では下値模索のサインが出ている。JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長、佐々木融氏は「米金利の低下と円ショート・ポジションの積み上がりがドル/円に二重の下方圧力となっている。100円割れとなってもおかしくはない」との見方を示す。

年初は3.00%付近だった米10年国債利回り

崩れたシナリオ

ドル/円は2月初旬から101─104円のレンジ相場を形成していたが、その背景として、日米金融政策の先行き不透明感があった。日本では黒田総裁が4月の会見で「いま追加緩和は必要ない」と発言。海外勢を中心に根強く残っていた追加緩和期待がはく落した。

この日の日銀金融政策決定会合では、政策運営に関する声明文から「15年近く続いたデフレ」などの文言が削除され、黒田総裁も会見で「異次元緩和の所期の効果が発揮されている」との認識を示した。

一方、米国では一時盛り上がっていた早期利上げ期待が後退。5月の議会証言でイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が「高水準の金融緩和が引き続き正当化される」などと発言するなど、超低金利政策の長期化が意識されるようになった。

外為どっとコム総研の調査部長、神田卓也氏は「今年の前半は日米金融政策の方向性の違いによるドル高/円安基調というシナリオが描かれていたが、そのシナリオが崩れ始めている。短期筋の見通しが外れたことで、今まで構築したドルロング/円ショートのポジションが巻き戻されやすい」と指摘する。

米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(5月13日までの週)によると、投機筋の円売り越しポジションは6万4707枚。昨年12月24日までの週の14万3822枚から半減しているが、市場では「アベノミクス相場当初の5万枚程度までは縮小してもおかしくない」(外資系証券トレーダー)との指摘も出ている。

メリルリンチ日本証券のチーフFXストラテジスト、山田修輔氏も「100円割れはいつ来てもおかしくない。円高が進むシナリオでは、ドル/円の底打ちは夏ごろまでかかる可能性もある」と指摘する。その上で「日本の貿易赤字や、堅調な米経済を前提とした金融政策の差などのマクロ要因は健在であり、次は長期的な円安に向かうと見る。年末には108円を想定している」との見方を示している。

 

(杉山健太郎 :編集 伊賀大記)

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